名言の意味するところとは。

“If you are first, you are first. If you are second, you are nothing.”

“Football is not a matter of life and death. It's much more important than that.”


 リヴァプールの黄金時代,その基礎を築いた名将であるビル・シャンクリーの言葉を引用してみました。フットボールの持つ魅力,あるいは魔力を端的に言い表し,結果というものがどれだけプロフェッショナルにとって重要なものか示した名言であるように感じられます。


 「フットボールは生き死にに関わる問題などではない。それよりもはるかに重要なものだ」というこの名言に関しては,拓海良さんのエッセイ(サッカークリック・アーカイブス)に,素敵な筆致で書かれています。ぜひ,ご一読下さい。フットボール・フリークならば,必ず共感する部分があるかと思います。


 そして,2004〜2005シーズンの欧州カップ戦決勝。


 ハーフタイムにラファエル・ベニテスがどのような指示をロッカールームの選手たちに送ったかは分かりませんが,少なくともシャンクリーが残した名言の精神が彼らにも十分に伝わったのではないか。そんな感じがします。


 「精神性」を必要以上に強調するだけでは結果を生み出すことはできない。


 言うまでもないことです。しかし,フットボーラーひとりひとりのテクニックやフィジカル,チームとしての組織戦術やシステムをあまりに重視し,「精神性」を過度に軽視しても,また望む結果は得られないように思うのです。


 シャンクリーがリヴァプールに植え付けたプライドが,シルヴァーウェア・コレクターと称される後継者・ペイズリーの時代に花開いたことは,決して偶然ではないはずです。


 「偶然性」に左右される要素が間違いなくあるフットボールだからこそ,その偶然性を積極的に呼び込むためにゴールネットを揺らす直前の瞬間までをでき得る限りロジカルに構築する必要がある。日頃ここで書いていることは,どちらかと言えばフットボールのロジカルな側面に着目したものです。ただ,ロジックを緻密に組み立てることだけでは偶然性を自らに呼び込むことはできない。常にチャレンジし続けること。その前提として,ゲームに臨むモチベーションを高く保ち,どんな相手であっても決して恐れることなく自分たちのフットボール・スタイルをしっかりと押し出す。そのためには,メンタル・タフネスが必要とされるはずです(=ロジックの方に多く着目している,とは書いたけれど,ゲームの後などではかなりメンタル面に関して書いていることもあるような。)。そんな部分を端的に示した言葉,と解釈しています。


 シャンクリーのこれらの言葉の裏にあることが何か,ということを考えはじめると,実はかなり普遍性を持った,どんなカテゴリの競技であれプロフェッショナルであれば心に留めておかなければならない意味が含まれているのではないか。私にはそう感じられるのです。