Japan v. Colombia (Group C・#3).

終戦で,(時間帯限定であるにせよ)狙う戦い方を表現できたこと。


 前半終了段階で,試合をイーブンな状態に持ち込むことができたことを含めて,ポジティブに捉えられる要素もある試合だったのは確かかな,と思います。思いますが,第1戦の段階でも提示された,ゲーム・コントロール面での課題を露呈してしまった。戦術的な課題も指摘できるかも知れませんが,この短期戦にあっては戦術的な課題だけでなく,心理的な課題も指摘できるように思うのです。


 グループリーグ最終戦,コロンビア戦であります。相変わらず,時期に遅れておりますので短めにまとめておこう,と思います。


 さて。後半開始直後の時間帯にフォーカスしてみよう,と思います。


 相手は後半開始に際して,戦術交代を仕掛けてきます。この戦術交代に対して,チームとしての意識が高い位置から,(あくまでも相対的に,ですが)低い位置に下がってしまったのではないか,と感じるところがあります。スコアで言えば1−1,「勝ち点3」をなんとしても積み上げなくてはならない状態であることを考えるならば,相手がこの戦術交代によってどのような戦い方へとギアチェンジしてくるか,という方向へと意識を振り向ける(必要以上に警戒してしまうこと)よりも,どれだけ前半の戦い方を維持できるか,という方向へと意識を振り向ける必要があったはずです。しかし実際には,戦術交代に対して,必要以上に意識を振り向けてしまった(相手を警戒しすぎて,結果として相手の戦い方を真正面から「受けて」しまった)ように感じます。結果として,チームが狙うべき戦い方が曖昧な状態になってしまった。ある意味で,第1戦と同じ状態に嵌り込んでしまったのではないか,と感じるのです。ディテールな課題,ではありますが,国際試合,それも真剣勝負ではこのようなディテールが勝負を分ける大きな鍵となるように思います。このディテールをどれだけ突き詰めることができるのか,は恐らく戦術的な部分と同じく,あるいはそれ以上に大きな課題になるのではないか,と思います。


 もうひとつ。後半開始直後からの戦い方を見るに,チームとしての機動性が落ちてしまった,という部分もあるように感じます。自分たちが狙うフットボールへと相手を引き込むためには,高い位置からのファースト・ディフェンスがどれだけ厳しく仕掛けられるか,が大きな鍵を握っているはずです。高いエリアでボール・コントロールを奪い返す,そのための機動性が求められるように思うのですが,この機動性という要素が後半になると落ちてきてしまったように思うのです。ちょっとだけ反対側の目線で見ると,この高いエリアでのファースト・ディフェンスを外し,シンプルに縦を狙う攻撃を仕掛けられれば,日本代表から攻撃リズムを奪うことができるのみならず,日本代表の守備応対を「追いかける守備応対」へと追い込むことができるわけです。


 攻撃リズムの基盤となっているのは高いエリアからの守備応対であり,この守備応対を繰り返すための重要な基盤が,チームとしての高い機動性であるはずなのですが,この機動性という要素がこの短期戦では不足してしまっていた。第1戦,第2戦で露呈した課題が,この最終戦でも大きく影を落としていたように思うのです。


 2010年とは違うアプローチ,攻撃面から組み立てたフットボールによってファースト・ラウンドを戦い,セカンド・ラウンドへの切符をつかむ。そして,準々決勝段階まで駒を進める。このチームが狙った戦い方は尊重したい(チャレンジを仕掛け続けなければ,フットボール・ネイションとの距離は正確に測れない),と思いますが,であるならば,このフットボールを最大限表現するためにもチームとしてのコンディションを整えておく必要があったはずです。セカンド・ラウンドへの切符をつかむためには,短期戦を制する必要がある。ならば,まずは短期戦を駆け抜けるためにコンディションのピークを設定する,その必要性があったはずだ,と。けれど,今回のファースト・ラウンドではチームとしてのコンディションが100%に近い状態だったとは感じられません。攻撃的な戦い方で真っ向勝負を挑むこと,その妥当性を判断しようにも,その前提条件となるはずの“100%フィット(に限りなく近いコンディション)のチーム”をブラジルに送り込み,ファースト・ラウンドを戦うことができなかったように見える。このことが最も,もったいないことであるように思うのです。