対イタリア戦(リポビタンDチャレンジ2014)。

ラグビー・ネイションを相手に,僅差の試合を勝ちきるチカラが付きつつあること。


 そして,弱点とされてきた要素を着実に潰し,自分たちの強みへと転換しながらチーム・ビルディングを進められていること。


 もちろん,この1試合だけを持って確定的に言うことはできませんが,2015,そして2019を考えるに,少なくともちょっとだけ,ラグビー・ネイションズとの距離を縮めることができつつあるように思います。RWCにおいて勝利を挙げること,のみならずセカンド・ラウンドで勝負することを射程に捉えるならば,彼らとの距離を着実に縮めていかなくてはならないはずです。そのためには,自分たちが自信を持って使える武器,強みを着実に増やしていくことが求められるはずです。そして,土曜日の秩父宮には,強みを着実に積み上げつつある姿が見えたように思うわけです。過去の対戦にあって,1回も勝利を挙げることのできなかった相手に対して,はじめて勝利という結果を引き寄せたことも大きな意味があるとは思うのですが,過去を断ち切ったということよりも,将来につながっていくだろう要素を秩父宮のフィールドに表現できたことに,より大きな意味があるように個人的には思うのです。


 フットボールではありますが,楕円球方面のフットボール,でありますればマリオ・バロテッリアンドレア・ピルロもいませんが,のイタリア代表戦であります。季節なりの雲があって,緩やかに風が吹き抜ける時間帯もあったのですが,やはり日差しが届きはじめると夏場の雰囲気を強く漂わせる,であれば,ラグビーフットボールにとっては決して最適とは言えないコンディションでありました。では,試合を振り返ってみることにします。


 前半立ち上がりの時間帯,先制トライを奪ってからの時間帯で試合の主導権を保持し続けられず,むしろ相手に試合のリズムを引き寄せられる時間帯になってしまいます。自陣深い位置,10mから5m付近のエリアで相手の波状攻撃を受ける局面になり,相手のパス・ワークをカットしようとしたプレーが故意の反則(得点機の阻止)と判断され時間退場処分を受けるとともに,相手に対してペナルティ・トライが認められます。コンバージョンも決まり,スコアは10−10,イーブンの状態になります。その後,ともにPGを1本ずつ決め,前半終了段階でのスコアは13−13,で試合を折り返します。厳しく見れば,相手に流れを譲り渡す時間帯をつくってしまったこと(抜けた時間帯,とは見えないだけに,しっかりと修正すべき課題がある時間帯ではないか,と思います。),結果として構築していたアドバンテージをイーブンな状態にまで引き戻されたことなどが指摘できるか,と思いますが,相手の後手を踏むことはなかったのはポジティブに見るべき部分かな,と思います。また,シックス・ネイションズを戦う相手に対して,自分たちが狙うラグビーでどれだけの勝負ができるのか,逆にどのような戦い方をすると相手が狙う戦い方に引き込まれることになるのか,明確に感じ取ることができた40分間ではなかったか,と思います。


 ハーフタイムを挟んで,後半であります。


 前半と同じく,試合の主導権を引き寄せ,掌握することはできなかったようにも思いますが,相手の後手を踏むことなく試合を動かせたのは収穫だろう,と思います。思いますが,後半は前半とはちょっと違って,アウトサイドからも課題と感じられる部分が複数あったように感じるのも確かです。ひとつは,相手が仕掛けてくるモールへの対応,であります。恐らく,相手はスクラムでもある程度の優位性を持っている,と見ていたのではないか,と思うのですが,実際にはスクラムで優位性を保持することはできず,むしろ日本に先手を取られる状態に陥っていたように感じます。そこで,相手はモールを積極的にドライブすることでエリアを奪いにいく,という戦い方へと切り替えてきたように感じるのですが,このモールをコントロールするまでにちょっと時間が掛かってしまった。このあとの攻撃をしっかりと抑え込めていたことを思えば,この試合では決定的な要素とはなっていませんが,試合のリズムを相手に引き寄せられる,そのきっかけともなり得る要素ですし,クリアしておくべき課題だろうと感じます。もうひとつ。相手にトライを奪われるきっかけとなった守備応対,オフロードから縦を突かれることになった守備応対です。気候条件的に厳しかったはずの土曜日の秩父宮にあって,この試合は「抜ける時間帯」を最低限に抑え込めていたのではないか,と感じます。しかしながら,この局面ではエア・ポケットが発生してしまった。相手No.8,その正面のスペースが潰しきれていなかったわけです。接点は比較的高い位置,であれば背後には大きなスペースを背負うことになります。守備応対面で隙を見せれば,縦を鋭く突かれることにもなる。この隙を見せてしまったように思うのです。この局面での守備応対は,修正しなくてはならない課題だと思います。


 この段階でのスコアは,26−23。ここで踏みとどまることができた大きな要素は,スクラムであります。


 ゲーム・クロックが35:00あたりを示していた時間帯から,スクラムで相手を釘付けにし続けます。これまでならば,恐らくスクラムで相手を抑え込む,と言いますか,試合そのものをコントロールするという判断はしなかったように思うのですが,土曜日の秩父宮ではスクラムを強みとして,相手に対して真っ向勝負を挑むだけでなく,相手に対して優位性を発揮する姿を表現することができていた。これまで,武器とはできていなかった要素を武器へと転換し,自分たちの強み,その厚みを増していく。そんな循環がこのチームではしっかりと機能しているのだろうことがこのイタリア戦,特に試合終了間際の時間帯からは感じられたように思います。


 これまで勝利を挙げられずに来た相手に対して結果を出し,望み得る最良の形で2013〜14シーズンを締めくくることができた。当然大きな収穫だと思うわけですが,2015に向けたステップを順調にクリアしている,という感触を強く残して,RWCシーズンに向かうことができることはより大きな収穫ではないか,と思うのです。