対C大阪戦(14−14)。

相手の強みを抑え込み,自分たちの狙う戦い方へと嵌め込む。


 相手の強みを抑え込むだけでは,どのようにしてゴールを奪うのか,という要素が抜け落ちることになるし,逆に自分たちが狙う戦い方を押し出すだけでは,相手に逆襲の起点を差し出すことにもなりかねない。今節に限らず,浦和に対して「数的同数」なパッケージを用意してくる対戦相手が今季は増えてきています。浦和の強みを抑え込む,という部分にウェイトを傾けた戦い方を持ち込んでいるわけです。そんな対戦相手に対して,今季の浦和は「過度に」自分たちが狙う戦い方を押し出さなくなった,と感じられます。守備応対面でのバランスを失うことなく,冷静に攻撃を組み立てていく,そんな姿勢が強く見て取れるように思うのです。


 この印象は,今節においても変わるところはありませんでした。相変わらずの遅筆堂(と言いますか,遅筆堂状態が標準装備化しておりますが。)であります,のC大阪戦であります。今回は,反対側の視点で試合を振り返るところからはじめてみよう,と思います。


 さて。敵将の発想は恐らく,ここ数節の対戦相手とほぼ相似形だろう,と思います。つまり,浦和の攻撃ユニット(1トップとアタッキング・ミッドフィールド)に対して数的同数な状態を維持することを狙って,パッケージを組み立ててきたように思うのです。でありますが,ここからどのように自分たちの強みへと浦和を嵌め込んでいくのか,そのための約束事が落とし込まれているようには思えなかったのも,また確かです。たとえば,浦和からどのようにしてボール・コントロールを奪うのか,そのためのエリアをどのエリアにセットしているのか。ボール・コントロールを奪ってから,どのように攻撃を組み立てるのか。そのための距離感,ポジショニング・バランスを落とし込めているかどうか。これらの要素を考えると,不明確な要素が複数見て取れたように思うのです。浦和の攻撃ユニットに対する意識が強すぎたのか,チームが低いエリアに置かれている時間帯が長く,ボール・コントロールを奪ったとしても,攻撃への移行がスムーズとは言えない印象が強かった。また,攻撃ユニットとしてのバランスも最適解とは言えなかったように感じます。1トップとアタッキング・ミッドフィールド(より具体的には,インサイド・ハーフ)との距離感が適切に維持できていない時間帯が長く,昨季までの機能性が相当程度に削り込まれてしまったように感じられます。


 浦和の強みを徹底して抑え込む,という要素「だけ」に意識を強く振り向けたがために,浦和が見せる隙に対して鋭く逆襲を仕掛けようにも,そのための準備がチームとして描ききれていない。特に前半段階では,このような印象が残りました。


 と,ここで終わってしまうわけにはいきませんので,浦和視点に戻して試合を振り返ってみますに。


 相手が低いエリアで守備応対を繰り返さざるを得なくなったのは,高い位置からの守備応対が立ち上がりの時間帯からしっかりと機能していた,ということを示しているように感じます。今節も攻撃ユニットは窮屈な距離感,視界で攻撃を組み立てていたように感じますが,攻撃ユニットの守備意識がチームにポジティブな影響を与えてくれているように感じます。たとえば,ボール・コントロールを失ったあと,相手ボール・ホルダーへのアプローチが素早く,鋭く仕掛けられている。相手にボールをフリーな状態で持ち出させない,という意識が徹底していることで,相手のポジショニング・バランスは結果として自陣方向に傾かざるを得ず,攻撃ユニットも攻撃面を意識したポジションを取り続けることが難しくなる。高いエリア,ボール・コントロールを奪われたエリアに最も近いエリアでの守備応対がしっかりと機能することで,前半段階は相手を押し込む(と言いますか,実質的にはハーフコートな状態で試合を動かす)ことができていたように感じます。


 後半についても,立ち上がりの時間帯をしっかりとコントロールできていたのではないか,と思います。今季は45:00から60:00前後までの時間帯で不安定な状態に陥ることがあったのですが,今節はこの不安定な時間帯を潰せていたように感じます。ただ,この時間帯に先手を打つ(先制点を奪う)ことはできなかった。そのためか,60:00を越えてからの時間帯で,ちょっとだけ相手に狙う戦い方を描き出されたようにも感じます。この試合の流れに対して,ダッグアウトがピッチに送り出してきたメッセージは明確でした。縦への鋭さ,速さによって相手を再び自陣方向へと押し込むことともに,相手守備ブロックが見せる隙を突くこと,です。先制点を奪取した局面を振り返ると,関根選手は相手守備ブロックに対して,斜めに鋭くチャレンジを仕掛け,パスを柏木選手へと出します。パスを収めた柏木選手は,この関根選手のスピードを生かしたパスを繰り出していたように感じられます。この先制点奪取によって,相手はゲーム・プランをある程度崩して仕掛けてくる,かと見ていたのですが,やはり大きくバランスを崩して攻撃を仕掛けてくる,というよりも,カウンターを狙う姿勢を徹底していたようです。


 この相手の戦い方に対しては,原口選手に代えて平川選手を送り出す戦術交代が,ピッチへのメッセージとなっていたように感じます。フットボーラーのコンディションを見るならば,原口選手とは違う選択もあり得たかな,と思いますが,ダッグアウトはアウトサイドでの守備バランスを優先して戦術交代を仕掛けた。アディショナル・タイム前後の時間帯を持ち堪えられたことを含め,いまはチームとしてどう戦い方を組み立てるか,明確なイメージが共有されているように感じられます。


 さてさて。最高の形で(リーグ戦に関しては,ですが)中断期間を迎えることができた,と感じます。とは言いながら,中断期間に入るのはリーグ戦であって,カップ戦(しかも,短期間に3試合が用意される,リーグ戦並みの過密日程)がセットされています。この流れを,しっかりとカップ戦へと持ち込んでいってほしい,と思います。