対横浜FM戦(14−10)。

リバウンド・メンタリティを表現することができるか。


 前節からの課題を考えるならば,このようなものではないかな,と思います。と同時に,ここ数節に共通する課題を考えるならば,後半立ち上がりからの時間帯をしっかりとコントロールできるか,という部分が見えてくるものと思います。これらの課題に対して,100%とは言えないかも知れませんが,一定程度の回答を表現してくれた。そんな評価ができるものと思うのです。


 リーグ戦は連戦に突入しておりますが,いつも通り(ということは,遅筆堂方面)の更新スケジュールから抜け出すことができておりません,の横浜FM戦であります。


 さて。今回はまずパッケージの話からはじめようと思います。


 今節は,セントラル・ミッドフィールドが最終ラインに下がる,その段階を基準としてパッケージを組み立ててきたように感じます。つまり,4のCBとして永田選手と那須選手を位置づけて,相手の1トップに対するアタック&カバーの関係性を明確にする。とともに,これまでならば,センターと疑似4バックなCBとなるセントラル・ミッドフィールド(今節ですと,阿部選手であります。)をSBとして位置づける。対戦対手が,中央での守備応対を基盤とする戦い方を組み立ててくるだろうことを見越して,サイドからの攻撃を強く意識付ける,という基本発想があったものと思うわけです。ではあるのですが,サイドが攻撃面で機能していたのは,どちらかと言えば右サイドではなかったか,と感じます。ごくおおざっぱに書けば,縦方向でのポジション循環がスムーズさを欠いてしまったように思うわけです。たとえば,阿部選手が縦にポジション・ブレイクを仕掛けるとして,その前方には宇賀神選手と原口選手がポジショニングしています。そして,宇賀神選手はサイドに開いている原口選手とのバランスを意識して,ポジショニングしていたように思います。静的には,確かに数的優位を構築しやすい形となってはいるのですが,むしろ窮屈なポジション・バランスになっていたのではないか,と思うのです。加えて,このパッケージはしっかりとした熟成過程を経ているものではないようで,ポジション・ブレイクに対して縦への仕掛けを促すようなシークエンスをユニットとして表現する,そんな局面はごく限定的だったようです。むしろ,ポジショニング,という部分での相手との主導権争いで優位に立っていた右サイド,平川選手を起点として攻撃を組み立てる局面が多かったように感じます。


 左右バランス,という問題はあるものの,サイドから攻撃を組み立てる,という戦術的な意図は確かに受け取れる。しかしながら,相手が中央で仕掛けてくる守備応対が,サイドからの攻撃をフィニッシュへとつなげていく,という部分などの攻撃面に大きな影響を与えていたことも確かだろう,と思います。攻撃ユニット,特に1トップとアタッキング・ミッドフィールド(インサイド・ハーフ)に対するマークが厳しく,なかなか縦にパスを繰り出すタイミングをとりきれない,そんな局面が今節は多く積み重なってしまいましたし,縦に対してパスを繰り出すことができたとしても,相手のマークを引き剥がすことが難しいために,攻撃リズムを縦に繰り出すパスをきっかけに強めていくこと(たとえば,相手守備ブロックに対して縦にチャレンジを仕掛けていくことであったり,パスを引き出すためのフリーランを仕掛けていくこと)が難しい,という形になっていたように思うのです。ピッチレベルでの視界をイメージすれば,相当に限定された視界のなかで戦っていたのではないか,と思います。


 0−0で試合を折り返して,後半であります。


 ここ数節の戦い方を振り返る限り,後半立ち上がりからの戦い方(正確には,45:00から60:00前後までの時間帯)が浦和の課題ではないか,と思っています。相手ボールでのキックオフから,相手の攻勢を真正面から受けてしまって,なかなかボール・コントロールを取り戻すことができない。守備応対から攻撃へ,というトランジットが機能せず,守備応対がボールを跳ね返す形になってしまう。この課題を今節は一定程度,クリアできていたのではないか,と思います。確かに,後半開始直後の時間帯は相手にリズムを掌握されかけたようにも感じますが,守備応対が,相手の攻撃を跳ね返すという形に追い込まれることがなかった。加えて,この時間帯に先制点をCKから奪取することができた。自分たちの持っている強みを基準として戦い方を組み立てる,というよりも,互いが相手の強みを的確に抑え込む,ということを意識して戦い方を組み立ててきたように受け取れるだけに,セットプレーは双方にとって,相当な重みを持っていたものと思います。であれば,セットプレーをモノにすることができた,ということは今節における大きな鍵だろう,と思うところです。


 先制点奪取直後,相手は攻撃リズムを強めてきたように感じますが,トップとアタッキング・ミッドフィールド,あるいはセントラルとのコンビネーションによって守備ブロックを揺さぶるような局面は限定的だったように思います。ちょっとだけ相手目線でこの時間帯を見ると,攻撃ユニットとしてのバランスが昨季ほどの水準には達していない,ということが大きく影響しているように感じられます。トップがしっかりと縦のボールを収めることで,アタッキング・ミッドフィールドやアウトサイドの縦への動きを促すことができる。また,トップに対するマークが付くことで,ミッドフィールドへのマーキングが相対的に緩くなり,機動性(流動性)を高めることができ,相手に対して先手を打つことができる。昨季ならば,おそらくこのような図式に持ち込んできたものと思いますが,今季は縦の流動性(機動性)を引き出す形に持ち込めていない。そのために,攻撃を分断しやすくなっているように思うのです。このことを浦和側から見れば,相手ボールホルダーに対するアプローチ,その強度などのバランスが取りやすかったのではないか,と感じます。相手ボール・ホルダーへのアプローチ,その強度が適切に維持できたことによって,守備ブロックとしての距離感(ポジショニング・バランス)もまた安定させることができたように思うわけです。


 さてさて。“リバウンド・メンタリティ”であります。


 浦和と同じパッケージに持ち込むことなく,浦和の強みを的確に抑え込むための方法論を構築している相手に対して,明確な対抗策を組み立て,バランスを意識して戦い方を表現できた,という意味で,しっかりとリバウンド・メンタリティを表現してくれたのではないか,と思います。もちろん,攻撃面と守備応対面とのバランスについて,まだ最適な位置を見いだしきれていないのではないか,という印象はありますが,少なくとも攻撃面だけにチーム・バランスを傾け,相手の術中に自分たちから嵌り込むことは少なくなってきているし,狙い通りに相手を自分たちの戦い方へと引き込めずとも,焦れることなく戦術的な約束事を表現できるようにもなっている。昨季とは違うアプローチで戦い方を組み立て,「勝ち点3」を積み上げることができつつある,ということは,中野田での“クリーンシート”が第10節経過時点で3試合になっていることからも見て取れるように思うのです。