対仙台戦(14−06)。

カップ戦では,戦力的な底上げを狙う。


 長いシーズンを考えれば,このようなアプローチを採用するケースも決して少なくはありませんが,水曜日の中野田,そのパッケージを考える限り,「戦力的な底上げ」だけがテーマであったとは思えません。2014型の浦和,その枠組みを固めるための重要なテスト・ベッドがカップ戦である。振り返ってみれば,このような位置付けだったようです。


 であれば,日曜日の中野田によってほぼ,2014型の枠組みは見えてきたのではないでしょうか。仙台戦であります。


 さて。大ざっぱに今節を振り返ってみますに。


 前半は,相手の守備応対に対して積極的にチャレンジを仕掛けていく,というよりも,守備応対面でのバランスを強く意識して試合を動かす,という意識が強かったように受け取れます。対して,今節の対戦相手は,高いエリアから強くボール・ホルダーへとプレッシャーを掛ける時間帯がかなり限定的だったように感じます。そのために,低い位置からのビルドアップは比較的スムーズであったように感じます。けれど,攻撃面でなかなか主導権をつかみきれなかった要因は,相手の攻撃ユニットへの対応ではなかったか,と見ています。トップに対して意識を強く振り向ける,というよりも,トップへいい形でボールを繰り出させない,そのためにアタッキング・ミッドフィールドへのマークを徹底する,という戦い方のイメージを持っていたように感じます。恐らく,相手のマークはビルドアップ面に相当な影響を与えていたのではないでしょうか。最終ライン,あるいはセントラルからの「縦」の意識は比較的強く受け取れたように思うのですが,この縦へのパス交換がなかなかいい形で収まらない,そんな局面が多かったようにも感じます。となると,アウトサイドをどのようにして攻撃面での起点にするか,でありますが,攻撃面での左右バランス,という意味で言えば,攻撃的な意図をより明確に描き出せていたのは右サイドではなかったか,と思っています。


 攻撃リズムを引き上げていく,そのきっかけをなかなかつかみきれないような印象も確かにあったものの,決して主導権を相手に持って行かれているわけではない。むしろ,カップ戦で可能性を感じることのできたパッケージ変更によって,シンプルにコンビネーションを引き出しながら相手守備ブロックに対してチャレンジしていく,という攻撃の形が見えてもいる。攻撃面での左右バランス,攻撃リズムを引き上げていく,という部分とリスク・マネージメントという部分をどうバランスさせるか,などの要素に課題がある,とも感じますが,慎重に試合を動かしながら,相手守備ブロックの隙を冷静に突く,そのためのチャレンジを仕掛けていく,という戦い方ができていたように思います。


 この戦い方のバランス,後半立ち上がりからの時間帯でちょっとだけ,そのバランスを崩しかけていたように感じます。相手が,戦い方に調整をかけてきたこと,その調整に対して戦い方をアジャストしきれない時間帯が発生したように思うわけです。しかしながら,今節についてはこの時間帯を乗り切ることができています。チームとして,相手の戦い方を真正面から受けるのではなく,バランスを取り戻すきっかけをつかもう,というアクションがチームから見て取れたように思うのです。たとえば,最終ラインではライン・コントロールを強く意識付けるアクションによって,チーム全体が低い位置に押し込まれることを回避すると同時に,誰が誰を見るのか,明確にするというような。


 同時に,ダッグアウトからも的確な「メッセージ」が打ち出されていたように思います。興梠選手から啓太選手への戦術交代,であります。セントラルのコンビネーションを昨季までの主戦,阿部選手と啓太選手のコンビに切り替え,柏木選手をアタッキング(インサイド)のポジションへと上げる。攻撃面での機能性を落とすことなく,同時に守備ブロックの安定性を高める。相手に押し込まれて,ラインが潰されるという事態を,戦術交代によっても回避する,というメッセージであったように思うわけです。この時間帯を乗り切ることで,相手が攻撃的な姿勢を強めて前掛かりになる,その背後をカウンターによって突く,という戦い方へと持ち込むことができた。


 さてさて。冒頭にも書きましたが,2014型がほぼ見えてきたのではないか,と感じます。


 今季は,昨季までの戦い方,その延長線上の戦い方を指向するというよりも,新たな戦い方を狙っている,と見るべきでしょう。これまで,攻撃面に強く置かれていたチームとしての意識を,守備応対面へと置き換える。当然,ポジショニング・バランスも守備応対面を意識したバランスへと変化するわけですから,攻撃面も変化します。同時に,パッケージ面でも調整が施されています。そのために,攻撃面で距離感の変化,であったりリズムの変化が発生していたように思うのです。この,ある意味不可避な戦い方のアンバランスを,パッケージ変更によって解消してきた。昨季までのパッケージとも違うし,シーズン立ち上がりの形ともちょっと違う。当然,チームには「刺激(=チーム内競争の活性化)」が加わっているものと思います。今節,攻撃面がしっかりと機能したことは,指揮官が施したパッケージ変更,そしてチームへの「刺激」が“right track”にあること,その手応えになり得るものだろう,と思います。