対広島戦(14−03A)。

攻撃面よりも,守備応対面に意識を強く傾ける。


 今季は,攻撃面にアクセントを強く置く,というよりも守備的な安定性をまずは意識する,という戦い方を指向しているように受け取れますが,今節については組織的な守備応対,戦術的な約束事を基盤とする守備応対という形ではなくて,1on1での強さが求められる守備応対を意識付けしていたように感じます。


 相変わらずの遅筆堂で申し訳ありません,なアウェイ・マッチな広島戦であります。ですので今回は,ちょっとだけ思うところを書いておこう,と思います。


 いわゆる“ミラーゲーム(同じ戦術的パッケージを採用する相手との対戦)”でありますから,どうしても局面勝負の側面は強くなるし,であれば相手守備ブロックに対してギャップをつくり出すにしても1on1の状態を剥がすためのアイディアが必要になってくる。この部分で,対戦相手は戦術的な先手を取った,と考えることもできるかな,と思います。


 ちょっとだけ,反対側の視線で試合を振り返ってみるに。


 守備応対面での安定性を強く意識付けていたのは確かだろう,と思っています。同時に,浦和にボールをある程度持たせる,という判断もしていたのではないか,と見ています。ビルドアップから攻撃リズムを変えていく,そのタイミングを狙ってリズムを寸断する。浦和がチーム・バランスを攻撃面に傾けてくる,そのタイミングを狙って,縦への攻撃を仕掛けていく。そんな戦術イメージを描き出していたのだとしたら,前半段階は相手が狙う戦い方が描き出される時間帯が長かったように感じます。


 攻撃面でのアイディア,と言いますか,相手を剥がして攻撃面でのギアチェンジを仕掛けるタイミングがなかなか取りきれない。ボールを保持している,というよりも相手にボールを持たされているような状態だったように感じますし,縦にシンプルな攻撃を仕掛けられてもいた。それだけに,相手のカウンターを抑え込めたことは大きいと思うわけです。相手がどのような戦術イメージを描き,縦への攻撃を仕掛けてくるか。明確なイメージを持っていたものと思います。躊躇なくポジションを崩してボールへとアプローチを仕掛け,相手の攻撃を潰す。プレーエリアの大きさもそうですが,的確な判断と果断な飛び出し,そして安定したボール・コントロール。今季の戦力設計,その意図するところがこれ以上ないほど明確に表現されたのが,相手の攻撃へ対応した局面ではなかったか,と思います。


 そして前半終了が見えてくる,そんな時間帯に先制点を奪うことができたことも今節での鍵であったように思います。後半,ビハインドを跳ね返す,試合の主導権を引き戻すためには相手は積極的に攻撃を仕掛けてくる必要が出てきます。守備応対面だけでなく,攻撃面への意識も求められてくる。その意識を利用しながら試合を動かすことができる。追加点,という部分で言えば,なかなか追加点を奪えない時間帯が続きましたが,反面でチームとしての強い守備意識,1on1で先手を取り続ける,という意識が明確に表現されていたように感じます。


 守備応対面での安定性や,組織としての守備応対をチームとして明確に意識付けるという,2014型の浦和が狙う方向性は貫かれている。攻撃面での機能性は抑え込まれてはいるかも知れませんが,「勝ち点3」を着実に積み上げていく,そのための基盤が整いつつある,とも言えるでしょうか。悪くないシーズン序盤の戦い方ではないか,と思っています。