制裁決定について思うこと。

千田さんが指摘したように,今回の問題はFIFAマターです。


 Jリーグからのリリースにも,FIFAマターであることが示されていますし,であれば,このリリースに記載されている制裁内容は当然の内容です。具体的な制裁内容が正式に発表されたことを受けて,今回の問題について思うことを書いていこう,と思います。


 2014シーズン開幕に先立ってこちらのリリースで示された重点禁止項目は,以下の6項目です。

※「重点禁止6項目」(すべての禁止事項のうち、特に重点的に取り組む事項を掲げております)
(1)差別的発言
(2)暴力行為
(3)ピッチ等への物の投げ込み
(4)器物破損
(5)立ち入り禁止エリアへの侵入
(6)スタンド内での喫煙


 これらの重点禁止項目は試合運営管理規程に定められている禁止事項,そのなかでも重点的に取り組んでいくべき項目である,と自ら定義づけているのですから,厳しく対処すべき項目であるのは当然です。であれば,Jリーグがリリースで指摘するように,競技場内で不適切な内容が書かれた横断幕が掲出されたということは重点禁止項目に抵触する行為ですし,速やかに適切な対応,つまりは横断幕の撤去ができなかったことについて責任を問われるのは当然,でありましょう。今回問題となった横断幕,その横断幕を掲示した人間がどのような意図を持っていたか,確認する必要があったのは確かとしても,歴史的な文脈から考えて(アメリカでの公民権運動,そのきっかけを思い浮かべてもらえば分かりやすい,と思います。)重点禁止項目に抵触するフレーズです。誰に向けているものか,という問題も重要ですが,文言自体からして即座に撤去しなくてはならないフレーズが書かれている,と考えるべきです。その意味で,いままでとは違う厳しい規制を講じるべきではなかったか,という見方は当然です。


 と同時に,浦和は必要以上の規制は応援の自由を阻害する,という考え方を示してもいます。この考え方を反映するように,浦和はこのリリースで,

誇りあふれるスタジアムは、規制や警備体制の強化で実現できません。ファン・サポーターの皆様の賛同が必要です。一人でも多くの皆様のご理解と、一人でも多くの皆様の自主的な参画を心からお願いいたします。


との表現を使っています。競技場へと足を運ぶひとたち,ひとりひとりのファン・サポータに対しての信頼を表現しているように思うのですが,この信頼が残念ながら悪い方向に作用してしまった。「甘え」につながっていたのではないか,と思うのです。


 毅然とした態度が必要なタイミングはすでにあった,と思います。Jがリリースで指摘している通り,です。複数回の制裁を受けている時点で,トラブルを起こした人間に対して毅然とした態度を取るべきではないか,と。それでも,信頼するというスタンスをとり続けてきた。このスタンスが結果として,「甘さ」に結び付いてしまったように思うところがあります。クラブが厳しい規制へと踏み出さないことをして,「許されている」と一部の人間は解釈してきた,あるいはクラブの態度に甘えてきたように映る。このような人間に対して「信頼」という言葉は使えない。にもかかわらず,クラブは毅然たる態度を取っていた,あるいは取ってきたようには感じられない。クラブ・サイドにも「甘さ(あるいは緩さ)」を感じるのです。


 信頼を基盤とするクラブの考え方に問題がある,とは思っていません。反面で,「信頼を裏切ってきた」人間に対して甘さを見せているかのような姿勢には大きな問題がある,とも思っています。信頼することと,毅然たる態度を取ること,厳しい措置を講じることとが矛盾することだとは思わない。今回の問題を契機に,毅然たる対応を取ることも明確にしてほしい。ファン・サポータへの信頼と毅然たる態度を,両立させてほしい。これはクラブへの信頼を取り戻すための大事な一歩である,と思っています。