対鳥栖戦(14−02)。

ひとつの連携ミスが,決定的なミスへと連鎖する。


 単純にスタッツから今節を振り返るならば,“NOT OUR DAY”という表現もできるかな,とは思います。思いますが,“NOT OUR DAY”な状態に自分たちから嵌り込んでいってしまった,という印象も強く残っています。


 鳥栖戦であります。


 端的に書けば,トランジットからビルドアップに移行する段階,この段階での不安定性,と言いますか,連携面でのズレが守備応対面での決定的なズレへとつながってしまったことが,相手に先制点(決勝点)を奪われる大きな要因となっています。反対側の視点で見れば,連携面に不安定性を見せているサイドでのコンビネーションを突いて高い位置からの攻撃を仕掛ける,という意図が嵌った,ということになるか,と思いますが,パスを繰り出すタイミング,パスの強さなどを含めて中途半端な形になってしまったことが,相手の意図に嵌り込んだ要因になっているように感じられます。


 ひとつのミスが,複数のミスを誘発する。


 ひとつのズレが発生したことで,ユニットとしての約束事が抜け落ちていったように思うわけです。誰が誰に付くのか。エリアを意識する守備応対ならば,距離感を縮めすぎることは大きな問題へと直結しますし,ひとに付く守備ならば,距離を詰めていけないことが問題へと直結します。誰が相手ボール・ホルダーに対してアプローチして,誰がカバーリングをするのか。この約束事が表現されている距離感ではなかったように思います。ひとに付いているようで,実際にはひとに付いているわけでもなく,エリアを潰すような距離感,というわけでもない。ボールを奪われた位置が高かったことも作用しているか,とは思いますが,あまりにも曖昧な状態になってしまって,フィニッシャーを自由な状態にしてしまった。攻撃的に,相手よりも多くのゴールを奪って勝ち点3を,という戦い方から,安定性に意識を振り向ける戦い方へとシフトしているのであれば,トランジットからビルドアップという局面での戦い方,そのイメージはしっかりと固めておかないといけないはずです。第2節,という段階で課題が明確に見えたことをポジティブに捉えて,しっかりとした戦術的修正をかけてほしいところです。


 しかしながら,守備応対面で決定的な課題を露呈したのはこの局面程度で,むしろ攻撃面での機能性が下がってしまっているように感じられます。守備応対面での安定性を意識しながら,同時に攻撃面での機能性を落とさない。2014型の浦和は,2013型の微調整,というよりも新たなバランスを要求するものであるように感じますが,守備ブロック方向から「新たなバランス」は見えてきているように思うのです。


 たとえば,チームとしてのコンパクトさが意識付けられるようになっているように受け取れます。


 前線から最終ラインの距離,という意味でのコンパクトさ,だと思いますが,このコンパクトさをCBとアウトサイドとの距離,という部分でのコンパクトさに結び付けられると,攻撃面での分厚さを再び表現できるようになるのではないか,と感じます。また,このコンパクトさとチームの上下動が組み合わされれば,守備応対面でポジティブな影響が見えてくるようにも思います。対して攻撃面を見ると,今季はスターターに微調整,特に中盤での構成に微調整をかけているために,ミシャさんが描いているだろう戦い方と,チームが実際にピッチで表現している戦い方とにズレが残っているように感じますし,まだ煮詰めるべき要素があるようにも感じます。守備応対面での微調整は方向性が見えているけれど,攻撃面,たとえばコンビネーションをスムーズに引き出すための距離感の調整,約束事の徹底という部分ではまだ詰めるべき部分が残っているように感じます。


 2014型の浦和,その基本的な枠組みは見えているし,守備応対面での安定性に意識を振り向ける,という約束事は浸透してきている,とも思います。この約束事からどのようにして攻撃面を積み上げていくか,トランジットから攻撃へ,という段階や相手を崩していく仕掛けを積み上げていくか,という部分で,昨季の強みをうまく織り込みきれていない,という印象です。


 昨季からの進化を狙って,戦術的な調整をする。


 意図的にバランスを変える,とも言えるはずです。昨季までの戦術イメージ,そのままではチームを機能させるのは難しい,そんなバランスだとも言えるでしょうか。であれば,ひとりひとりのインテリジェンスが再び重要な鍵となる段階になっているように思うのです。昨季は,2012シーズンの戦い方をより攻撃面で先鋭化させる,という方向性だったこともあってか,攻撃面での意識,戦術的な約束事は相当程度に浸透したように感じます。この戦い方を基盤に,守備応対面という要素を織り込んでいく。チーム・バランスという意味では再び最適なポイントを探り出す必要が出ているはずですし,そのためには「個」の戦術理解度,ゲーム・インテリジェンスが強く求められるように思います。第2節という段階で,チームの課題が明確に見え,新たに取り組んでいることに一定程度の収穫も見えてきた。今節での「勝ち点0」を意味あるものとするためには,今季型のフットボールをしっかりと煮詰めること,そのためにも提示された課題をしっかりとクリアすることが求められるものと思います。