フォード・フィエスタ。

ゲイドンが新たにコンパクトを仕立ててきました。


 と言ってもそれほどの不思議のないフロント・セクションであります。と言いますか,シグネットトヨタIQをベースに,アストンが仕立てたコンパクト)に代わる新たなコンパクトとしてリリースされる可能性もゼロではない,かも知れません(あくまでも,シャレ半分の推理ですが)。




 今回もフットボールを離れまして,こちらの記事をもとに日本市場に導入されたフォード・フィエスタについて書いてみよう,と思います。


 お世辞にもオシャレとは言いにくいのだけれど,走らせるとなかなかに魅力的。


 2002年頃までの個人的なフィエスタへのイメージは,このようなものでした。私がUKでこの車を借りた時期もこの時期に重なるのですが,外観にしてもインテリアにしても何の変哲もない実用車で,恐らく外側から見ていただけ,あるいは単に運転席に座っているだけでは印象は残らなかった,かも知れません。けれど,カーディフからブレコン・ビーコンズ国立公園方面へとクルマを走らせてみると,走らせて楽しい,という姿が見えてきました。


 外観から受ける印象と,走らせての印象に(いい意味での)ギャップがある。乗ってしまえば,持っている魅力は(クルマを走らせることが好きなひとならば,なおさらに)即座に理解できると思うのだけれど,外観やインテリアの印象があまりに地味(凡庸)であるがために,なかなかその魅力を理解してもらうための出発点にまでたどり着けない。この試乗記事をまとめた鈴木さんも指摘されていますが,かつてのフォードは乗ってみれば分かる魅力を,外観やインテリアで端的に表現しよう,という意識が薄かったように思うのです。


 そんな「素っ気なさ」は,このフィエスタからは感じられません。


 このデザインを統括したのは,昨年までフォードに在籍されていたジェイ・メイズさんとのことですが,実用性の確保とスポーティさの訴求を巧みに両立させているように感じます。フロント・セクションからリアへの流れは明確なウェッジを描き,グラス・セクションの配置を含めて疾走感を表現しているようです。ちょっと見ると,クルマ全体が低く構えているように感じられるかも知れませんが,ドアの厚み(サイドシルから,ウィンドウ下端までの距離)を見ると,かなりの厚さが確保されていることが見て取れます。ルーフの物理的な高さは確保しつつ,視覚的には低く構えているように印象付ける。メイズさんを中心とするデザイン・チームの仕事,その確かさを感じさせる部分かな,と思います。また,面構成を眺めてみると,曲線を多用するような面構成ではなくて,曲線も面に力感を持たせるような形で配置されているように受け取れます。なかなかにまとまりのある,そんなデザインではないかな,と思います。


 搭載されるエンジンは,1000cc・直列3気筒ターボエンジンであります。欧州では,大型車であっても小排気量エンジンを搭載する,“ダウンサイジング・コンセプト”が浸透していますが,このフィエスタも例外ではありません。スペックシートを見ると,最高回転数は6000rpm,とのことですが,最大トルクの発生回転数を見るに1400rpm〜4000rpmとのことですから,このエンジンも「ディーゼル的」な使い方(トップエンドまで回すことに意識を振り向けるのではなくて,トルクが美味しく使える回転域を繋ぐような使い方)が理想的であるようです。


 見た目と,乗っての印象がやっと一致してきた。ちょっとだけ,フォードの「乗ってみての魅力」を知っている立場からすれば,楽しみなコンパクトであります。