DIG−T R。

直列3気筒・1500ccターボ。


 排気量だけを取り出せば,今季からのフォーミュラ1,その技術規則に規定されている排気量と近いものがありますし,直列3気筒というレイアウトを考えると,市販車(特に,コンパクト・クラス)との共通性を感じさせるものがあります。



 今回はフットボールを離れまして,こちらの記事をもとに“ZEOD RC”に搭載されるエンジン,“DIG−T R”について短めに書いていこう,と思います。


 個人的に考える,このエンジンの特徴は「小型軽量」であること,だと思っています。この記事をまとめたエディターさんによると,このDIG−T Rの重量は40kg,ディメンションはH:500mm×W:400mm×D:200mmとのことで,この記事にはニスモの宮谷社長がエンジンを抱えているオフィシャル・フォト(でありましょう。)も掲載されています。この「小型軽量」であることが,恐らくは“ZEOD RC”の戦闘力の鍵になるのかな,と思っています。


 今回,日産がル・マンに持ち込む“ZEOD RC”はEVモードで1ラップする(当然,レーシング・スピードを維持できることが前提でありましょう。),ということが公式に発表されています。12ラップを1つの循環として捉え,1周を純然たるEVとして走行,あとの11周をエンジン走行する,という形です。となると,モータとエンジンのバランス,が大きな鍵になってくるように思うのです。たとえば,高性能なモータを搭載するとして,そのモータをサルテの1周分しっかり仕事させるためには,どれほどのバッテリ容量が必要か。この重量と,残り11周のエンジンに必要とされるガソリン量を計算して,燃料タンクの容量(ということは燃料の重量)とエンジンの重量が導き出される,ということになるのだろう,と思うわけです。


 デルタウィング・プロジェクトに日産が参加していたとき,確かLMP1とLMP2の中間的な性能を狙う,というアナウンスメントがあったと記憶しています。このときはジュークに搭載されているエンジンをベースとするレーシング・エンジンが搭載されていたと思いますが,このエンジンでは恐らく大きすぎる,という判断だったのではないでしょうか。より小さく,効率的に狙う性能を引き出すパッケージとして,今回のディメンションを持ったエンジンが開発された,ということではないかな,と思うのです。


 小型軽量であることと,耐久性とをどれだけバランスできるか。


 相当に攻めた設計をしているでしょうから,バランスを取るのもそう簡単な話ではない,と思いますが,ぜひともしっかりとした煮詰めを(そして,LMP2上位と互角に近い勝負を挑めるだけの戦闘力を),と思っております。