鈴鹿と箱根。

確かに,耐久選手権の1ラウンドではあるのです。


 あるのですが,純然たる耐久レースか,と聞かれると,なかなか明確な答えが出せないようにも思うのです。結果的には耐久レースなのだけれど,ある局面を切り取るとスプリントとしての色彩がとても強い。スプリントを繋ぎ合わせて,結果として8時間を走破するレースになっている。そんなレースが,鈴鹿8耐のように思えるのです。


 この印象,どこかで箱根駅伝と共通していないかな,と思うのです。今回は,レーシング・フリークが思う箱根の姿をちょっと書いてみよう,と思います。


 ある時期まで,箱根には明確な「エース区間」が存在していたように思います。鶴見から戸塚,第2区です。この第2区を基準に,どう戦い方を組み立てるか,が往路における基本的な戦略になっていたように思うのです。けれど,ここ数季,箱根は明確に「高速化」してきています。さらに,戦略的な軸として第2区とともに第5区が位置付けられるようになっているし,この軸を効果的に機能させる,という側面から見ても,「つなぎ区間」とされてきた第3区や第4区,その重要性が増してきたようにも感じるのです。


 この戦い方の変化,鈴鹿8耐にもどこか共通する部分があるように思うのです。


 鈴鹿ですと,マシンを壊さないこと(手堅くレースを動かすこと),よりも,8時間プッシュし続けられること(首位にプレッシャーを掛け続ける,という意味でのプッシュであり,追いすがるライバルを振り落とすためのプッシュでもありますが。)が求められるように思います。ひとりのライダーがライディングを担当する,その枠のことをスティントと呼びますが,このスティントではスプリントを仕掛けていくことが求められることになるのです。そのために,チームの組み方も変化をしてきているように思うのです。ひとりがエースで,もうひとりがエースをサポートする,というチームの組み方がかつては一般的だったように思うのですが,最近のチームを眺めてみると,タイムの落ち込みを最低限度に抑え込む,そんなコンビネーションを意識しているように感じられます。


 スプリント化に対応するために,マシンも変化してきているはずです。


 単純に,安定性重視のセッティング,チューニングを施すわけにはいきません。プッシュを仕掛け続けることのできる耐久性が確保される必要があるのは当然として,相手と互角,あるいはそれ以上の勝負を挑むことのできる「タマ」をいかに仕込めるか,が求められてくるはずです。ある意味,鋭くエッジを立てるようなチューニングを施していく,その必要性が強くなってきているように思うのです。


 ここ数季,箱根では途中棄権を余儀なくされるチームが印象に残ります。


 高速化,という傾向に対応しつつ,さらに先手を取ろうとすれば,故障が発生するギリギリまで追い込まないといけない。けれど,実際に故障が発生する領域にまで踏み込んでしまうと,戦い方を根幹から揺るがすことにもなりかねない。当然,記録がなくなってしまうという事態もあり得る。トレーニングにあっても,鋭くエッジを立てるようなバランスが求められてきている,ということではないか,と思うのです。


 高速化,スプリント化によって,より緻密にすべてを組み立てることが求められるようになってきた。この緻密な作業を繰り返すことのできるチームに勝負権が与えられる,ということかも知れません。