対C大阪戦(13−34)。

自分たちの戦い方へと,相手を嵌め込む。


 そのために,どういうボールの奪い方をすべきか。


 そもそも,嵌め込み方の段階で迷いがあるのかな,と思います。ボールホルダーを追い込む,その守備強度も不安定だし,どのエリアで追い込むだけでなくボール奪取を意識した守備応対を仕掛けていくのか,その戦術的なイメージも見えてこない。


 「自分たちのフットボール」という言葉が,攻撃面だけで止まっていて,その攻撃をスムーズに機能させるためにどういうボールの奪い方をすべきなのか,攻撃面を強めたときにどのようなリスク管理をすべきなのか,という約束事が曖昧な状態になってしまっている。


 当然,戦術面での課題になりますし,守備応対面での整備を,という見方もできると思います。と同時にチームとしての心理面,チームがひとつの方向でしっかりと束ね上げられていること,という側面から解決することもまた,相当に重要なのかな,と思っています。最終節,C大阪戦であります。


 不本意ですし,書きたくないことですが。


 ここ数節,チームの心理面を整えて「戦える」状態にする,という意味での100%の準備はできていないな,と思います。それだけ,ナビスコカップ勝戦のダメージは大きかった,と見ることもできるでしょうか。自分たちの形を表現しながら,結果を引き寄せきれなかった,そのダメージが心理面に相当な影を落としているのではないかな,と。しかしながら今季,優勝を争うために重要な試合,という段階で,浦和が「いい準備」をしてきた,という印象もまた,薄いものがあるな,と思っています。


 大ざっぱに言えば,大事な試合になると「勝ちたい(攻撃面と守備応対面,その心理的なバランスが攻撃面に傾いている)」と「負けたくない(心理的なバランスが,守備応対面方向に傾いている)」という意識がチームの中でぶつかりあってしまうように感じるのです。今節にあっても,この2つの意識がぶつかり合っていた,という印象です。また,コンビネーションの精度,緻密さが失われてきているな,と思います。ボールを受けるフットボーラーに対して,ボールを受けやすいサイドにパスを繰り出す,その緻密さであったり,ボールを引き出しやすいポジションにまでちょっとだけフリーランを仕掛ける,その緻密さ(丁寧さ)がここ数節は失われている。ネガティブな意味でのポジション・フットボールになりかけているな,という印象があって,今節にあってもその印象を残念ながら踏襲してしまったように見えるのです。


 立ち上がりの時間帯,チームは「攻撃的に」という意識で束ねられていたかな,と思います。先制点を奪うまでは,チームが描くべき戦術イメージ,約束事にはそれほどのズレはなかったのではないか,と。ただ,ずれていくきっかけのようなものは,すでにこの時間帯からも見えていたかな,と思います。守備強度,の問題です。ボールホルダーに対するチェイシングが徹底されているようには感じられなかった。そのために,相手の攻撃を減速させることができなくて,相手の攻撃に対して「追い掛けながら」守備応対をする形になりかけていたように思うのです。


 この形が明確になったのが,先制点を奪ってからの時間帯,です。


 追加点を奪えなかった,という部分も作用しているからも知れませんが,チームの描くべき戦術イメージが曖昧さを見せるようになってきたように思うのです。また,コンビネーションの精度がやはり低くなってしまっている。好調時ならば,「見えている」と感じられるエリア,ボールホルダーの視界がかなり狭くなっているようにも感じられます。狭くなってしまった視野,下がってしまった精度を補うために,「ひとを掛ける」方向に意識が傾いてしまう。この意識と,リスク管理,という部分がぶつかり合ってしまえば,チームが前後分断状態に陥ってコンパクトさを失う(前後方向に引き延ばされて,中盤を相手に自由に使われる)ことになるし,コンパクトさを維持しようとしても,ボールホルダーへのアプローチ強度が下がってしまっているから,今度は最終ライン背後のスペースを狙われることになる。


 先制点を奪ってからの時間帯は「相手の隙」を冷静に突く,のではなくて,自分たちから隙を見せてしまっていた,相手が仕掛けてくるカウンターに対してあまりに無防備な状態に陥ってしまったな,と思うわけです。先制点を奪い,主導権を掌握するのであれば,バランスを意識しながら相手に「隙」が見えるまでスローな試合の動かし方をしてもいい,と言いますか,相手を焦らせる必要があるはずです。なのに,ここ数節の浦和は自分たちが「焦ってしまって」いるように映ります。相手の隙を突く,そのための攻撃であってコンビネーションであるはずなのに,この攻撃面だけがクローズアップされてしまって,「相手の隙」を突けているのかどうか,という部分が見えていない。


 端的に書けば,今季の浦和は優勝を「攻め獲る」という意識を強く持っていたと思いますが,その思いの強さゆえに「普段通り」の意識が抜け落ちる,そんな試合がいささか多かったのではないか,と思うところがあります。相手の隙を突くためには,相手の隙を見抜かないといけない。当然,自分たちから隙を見せるわけにもいかない。今季の浦和は,「自分たちのフットボール」という言葉の裏で,「相手が嫌がることをする(相手の弱み,隙を「冷静に」突く)」という部分で,(恐らくは,気負いが邪魔していたのだろう,と思いますが)「冷静さ」を失うことがあまりにも多かった,ように感じます。戦術面での問題点,というよりも,心理面でチームがアンバランスさを見せる,そんな試合が多かった。


 心理面,戦術面を含めて「普段通りに,100%の準備」を試合に向かってできるかどうか。


 基礎的な話かも知れませんが,その基礎に立ち戻るべきなのかも知れない,と感じています。