倒すべき相手へ(対NZ戦)。

最強の相手を,どう倒すか。


 いままでは,具体的なプランを描けなかったかも知れません。過去の戦績を見れば,描く以前の段階だったという厳しい見方も,決してアンフェアなものではないでしょう。けれど,この試合が転換点になるのではないか,と見ています。そして,ニュージーランドに代表されるラグビー・ネイションズを相手にどう戦うか,そのヒントは最強の対戦相手,その姿のなかにあったのではないかな,と思っています。自分たちの戦い方へと相手を嵌め込む,その道筋の作り方を,対戦相手の戦い方は示唆していたように思うわけです。


 秩父宮でのニュージーランド戦について,ちょっと短めに書いておこう,と思います。


 ファイナル・スコアから見ると,現状における実力差が的確に反映された得点差,と言うべきかも知れません。それでも,20分前後までの戦い方は決して悪くない,と思っています。また,戦う姿勢をノーサイド間際の時間帯であっても失わなかったことは,彼らとの距離をさらに縮めるにあたって,決して小さくない足掛かりになるかな,と思っています。


 ではありますが,ラグビー・ネイションズに対して互角の勝負を挑むためにはクリアすべき課題,持っていなくてはいけない要素が見えてきたのも確かだろう,と思っています。クリアすべき課題としてはやはり,前半26分以降の時間帯ではないかな,と思います。26分にトライを奪われると,31分までに3トライ3コンバージョンを奪われてしまう。自分たちの戦い方に相手を引き込む以前の問題として,相手の戦い方に嵌め込まれてしまって,相手のリズムから抜け出せない時間帯が出てきてしまう。このような時間帯をどう短くするか(理想を言えば,潰しきれるか),が課題だろうと思いますし,そのためにも守備応対面で鋭さ,速さを失わないことが大事になってくるのかな,と思うところです。


 さて。最強と呼ばれる対戦相手は,小さな隙を見逃すことがないし,この隙を的確に攻撃へと結び付けていきます。当然,試合前の準備,スカウティングを通じて,相手の強みがどこにあって,相手の弱点がどこにあるのかを確認して,自分たちの戦い方に落とし込んできているとは思います。この準備に加えて,実際に戦いながら相手の戦い方,その強みを抑え込むためのポイントをフィールド・レベルで把握し,活かすチカラが,彼らが「最強」と呼ばれる,その大きな要素となっているように思うのです。


 このチカラを,持たなくてはいけないのだろう,と思うのです。


 時間帯限定であるにしても,自分たちの戦い方がラグビー・ネイションズに対して通用する,という手応えは感じるところがあったと思います。反面で,試合全体を通じてみれば,相手に試合をコントロールされてしまった時間帯が長いのも確かです。そのきっかけは,ちょっとした隙であったり,ミスです。ディテールな部分の話ですが,相手はそんなディテールを見逃すことがありません。この,ディテールを見逃さないチカラ,相手を自分たちの戦い方へと嵌め込む,その嵌め込み方を,相手に応じて柔軟に変えていくことができる。このチカラを体感できたことは,大きな意味があったのではないかな,と思うところです。


 最強と呼ばれる相手であっても,自分たちの戦い方へと引き込んでいく。その道筋を具体的に描くことが,彼らとの距離を縮めていくことにつながるのではないか,と思っています。その意味で,この試合は最強の相手を「倒すべき相手」として名実ともに位置付けることになる,そのきっかけなのかな,と思うのです。