対柏戦(2013・決勝戦)。

勝戦段階で,「対応力」が問われてしまった。


 現実的な戦い方を狙う相手に対して,自分たちの戦い方へと引き戻す,そのための引き出しが問われてしまった,という印象が残っています。けれど,問われただけではなくて,ヒントはあった,とも思っています。このヒントを,シーズン最終盤に何としても活かし,頂点を狙わないといけない。


 いまの姿での国立霞ヶ丘では最後,のナビスコカップ勝戦であります。


 相手が守備応対を基準にして戦い方を組み立ててくるだろうことは,中野田でのリーグ戦の段階で透けて見えていたことでもあります。30節の段階では,まだまだ徹底できていない要素が感じられたけれど,徹底できていなかった要素はそのまま,戦術的な確認ポイントでもあったはずです。このポイントを強く意識して,現実的な戦い方を組み立ててきました。


 リーグ戦段階では,トップに対する意識は徹底されていたように感じますが,3(あるいは5)を明確にするような戦い方とまでは感じられず,アタッキング・ミッドフィールドとサイドへの守備意識はそれほど徹底できていなかったように思います。トップだけ,であるとか,エリアを限定した守備応対の意識ではなくて,浦和の攻撃ユニット全体をしっかりと意識してブロックとしての守備応対を,という方向性の戦い方を持ち込んできたように思うのです。


 浦和の強みを意識し,この強みを抑え込むために浦和とマッチアップするパッケージを持ち込み,守備ブロックの安定性を基盤にカウンターのチャンスを狙う,という戦い方を選択した,と。


 この戦い方に対して,浦和が狙うべきは70分前後の形ではなかったかな,と思います。1on1で相手のマークを剥がす,だけでなく,縦方向のポジション・チェンジによって相手のマークを剥がしに行く,という形がこの時間帯には表現できていたように思います。残念ながら,最終的なフィニッシュがゴールには結びつきはしなかったものの,マーカーを明確にする戦い方をしている相手に対して攻撃を機能させる鍵となる形ではなかったかな,と思うのです。


 浦和がなかなか自分たちの戦い方へと相手を引き込めない,そのときの戦い方は(ちょっとネガティブな意味での)ポジション・フットボールに傾いているように思います。自分たちの戦い方,攻撃の仕掛け方,という「枠」を強く意識し,こだわることは重要ですが,強引に相手守備ブロックを崩しに行ってしまって,かえって相手守備ブロックがマークを付けやすい,そんな局面をつくってしまっているようにも感じます。相手は,厳しくマークを付けてきている,そのときに,コンビネーションからマークを剥がしていくような動きがあると,相手守備ブロックに混乱を与えることができる(少なくとも,その可能性が出てくる)し,決定機をつくり出すこともできる。


 ディテールな部分の話ですが,重要性を持った試合ほど,ディテールに関わる部分が重い意味を持ってくるのもまた確かなように感じます。カップを懸けた試合で,ディテールな部分での課題,その課題をクリアするためのヒントが見えてきたように思います。カップを掲げられなかったのは悔しいし,この悔しさは再び同じ舞台に立ち,カップを高く掲げることでしか雪げない,とも思います。反面で,このチームがさらに進化,熟成していくための小さくない鍵が見えた,とも思います。


 まだ,13シーズンが終わったわけではありません。この試合で見えたヒントは,リーグ戦最終盤にあっても大きな意味を持つ。そんな印象を持っています。