対柏戦(13−30)。

小さな違いが,局面を左右した。


 そんな立ち上がりだったのかな,と思います。


 ひさびさに日曜日がマッチデイ,な柏戦であります。台風一過(この時期,あまり相応しいとは思えない表現ではありますね。),中野田を北ゴール裏から南方向へと強く吹き抜ける風は季節の先取りのようでした。いつもならばスタンドレベルで感じられる風と,コーナーポールに取り付けられているフラッグのはためき方とはちょっとした違いがあったりするのですが,日曜日の中野田について見れば,南側のゴールネットが風をはらんでいるのが確認できるほど,でありました。


 さて。試合を振り返ってみますに。


 相手が,自分たちの3に浦和の3を嵌め込む,そのきっかけをどうつかもうか,というタイミングで先制点と追加点を奪取できたことが,この試合における大きな鍵だろう,と思います。今節の相手は,浦和に対して3を持ち込んできました。ですが実際には,立ち上がりの時間帯には「疑似3」的な対応に陥っていたように思うのです。守備ブロックとしての安定性を意識したポジショニング,いわゆる5バック的な位置取りというわけでもないし,攻撃面で先手を取ろう,という位置取りというわけでもないように受け取れる。アウトサイドのポジショニングが中途半端な状態に追い込まれていたように思うわけです。相手からすれば,浦和の戦い方を冷静に観察する時間を意識していたかも知れません。この時間を浦和は与えずに,立ち上がりから主導権を奪いに行った。相手が,浦和に対する戦い方を整理できていない,その隙を突いてサイドでの主導権を立ち上がり早い時間帯で掌握することに成功した。また,相手守備ブロックはかなり1トップへの対応に意識を振り向けていたように感じます。そのために,アタッキング・ミッドフィールドへの対応が薄くなっているようにも受け取れました。アウトサイドと,アタッキング・ミッドフィールドが相手の隙を突ける形になっていた。この形を見逃すことなく,ゴールを立て続けに奪うことができたことが,大きな要素になっているように思うわけです。


 序盤の段階で主導権を掌握する,かのような立ち上がりではあったのですが,自分たちから流れを相手に譲り渡すような形で相手にショート・カウンターを仕掛けられ,ゴールを奪われてしまいます。ここから,相手がもともと描いてきただろう戦い方に嵌り込むような時間帯が出てきてしまいます。


 相手は,ここ数節の浦和が表現してきている戦い方を意識して,攻撃面を組み立ててきていたように感じます。浦和が仕掛けてくる,高い位置からのチェイシング(ボール奪取も意識している,積極的なアプローチ)を回避するために,早い段階でボールをシンプルに縦に繰り出し,トップが収めたリフレクトで攻撃をフィニッシュへと持ち込む,という形です。


 対して,今節の浦和は必ずしも,100%な状態で積極的なアプローチを仕掛けられてはいなかったように感じます。今節は興梠選手に代わって阪野選手がスターターとして入っています。阪野選手もチーム・コンセプトを理解してチェイシングを仕掛けてはいるのですが,たとえばアタッキング・ミッドフィールドとの連動性を意識したチェイシングを仕掛けられていた,相手を追い込んでいくような形でプレッシングできていたとは言いにくいものがあります。また,やはり柏木選手がフル・フィットとは遠い状態だったようです。ゴール,という部分では決定的な仕事をしてくれましたが,チームとしてのエリア・マネージメント,その鍵を握るフットボーラーのフィットネスとしては,やはりケガの影響が小さくないのだろう,と感じます。フィットネスが安定している状態だと,ボールホルダーに対して徹底したチェイシングを仕掛けていっているのが,今節についてはある程度エリアを絞り込むような形でチェイシングを仕掛けるような形になっていました。浦和の守備応対面,その初期段階を支える機動性が,今節は低下してしまっている。守備ブロックにとっては厳しい状態だったかと思うのですが,失点後の時間帯,そして後半を通じて守備ブロックが冷静さを失うことなく守備応対を繰り返すことができた,というのがもうひとつの鍵ではなかったかな,と思います。


 立ち上がりと,失点ごとの印象が大きく違う試合。と言いますか,主導権を掌握できていたはずが,自分たちのミスから主導権を譲り渡し,なかなか取り戻すことが難しかった試合,と見るのがフェアかな,と思います。けれど,この難しさのなかに,浦和のフットボールをさらに熟成させていくヒントがあるかな,とも思っています。


 国立霞ヶ丘での決勝戦,そのヒントとも言えるかも知れません。今節積み上げた「勝ち点3」が収穫なのは当然として,戦い方のヒントをつかめたこともまた,収穫と見ることができるように思います。