第93回全国高校ラグビー埼玉県予選(3回戦概論)。

Aグラウンドへの,指定席切符。


 この切符は,8枚だけ用意されています。比較的,実力差がファイナル・スコアに反映されやすい競技ですから,ともすればシード勢だけに勝負権がある(4回戦へとシードが駒を進めるのは当然),と思われるかも知れません。けれど,個人的には案外難しい段階ではないか,と見ています。シード校にとって,トーナメントにいいリズムで入っていけるかどうかが試される初戦だから,です。


 ラグビーフットボールにも,アソシエーション・フットボールのように「僅差」が確かに存在しています。この僅差を味方につけられれば,ともすればアップセットが発生する,かも知れません。反面で,この僅差は「決定的な」僅差である可能性も,当然にあるわけです。


 今回は,フットボールではありますが楕円球なフットボールの話,であります。トーナメント表(高体連ラグビー専門部)をもとに,高校ラグビー埼玉県予選,3回戦の話であります。


 端的に結論から書くと,Aシード校はともに,Aグラウンドへの指定席切符を確保しています。


 深谷高校は,攻撃力を前面に押し出すような形で初戦を制し,浦和高校と川越工業高校は守備応対面での安定性を表現するような形で初戦を突破しています。彼らとは違って,同じAシード勢で厳しい戦いを強いられたのが伊奈学園総合高校だったかな,と思います。ファイナル・スコアは19−14,対戦相手である城西川越高校との得点差は5(コンバージョンを含まない1トライ差)です。厳しく見れば,この得点差こそが,Aシードとノンシードを分ける壁,と見るべきかも知れません。しかしながら,ノンシードがAシードと互角な戦いを展開したことは,大きな意味があると思うのです。


 城西川越にしてみれば,Aシードの壁を破りきれなかった,1トライ差にまで詰めてはいるものの,彼らを上回ることができなかった,という思いがあるかも知れません。けれど,相当程度の手応えを感じることもできたのではないか,と思うところです。ノンシードでもAシードを追い詰めることができる。自分たちの持っている強みを認識できた部分もあるかな,と思います。と同時に,5点差を詰め,さらに得点差を作り出すためには何が足りないのか,体感した部分もあるでしょう。来季以降のチーム・ビルディングにとって,大きなきっかけになるゲームだったのではないか,と思っています。楽しみなチームが出てきた,という印象です。


 楽しみなチーム,という意味で見れば,Bシード勢である獨協埼玉と昌平でしょうか。


 攻撃面,あるいは守備応対面で明確な強みを持っている,との印象はファイナル・スコアからはなかなか受け取れるものではないのですが,接戦をものにしながらしっかりと勝ち上がり,4回戦への切符を奪っています。トーナメントを勝ち上がりながらリズムをつかみ,続く4回戦でどういう戦いぶりを見せるかによっては,ダークホースとしての存在感を示すのではないかな,と思っています。


 残る2枚の切符は,同じくBシードである慶應志木,そして進修館が確保しています。結果的には,シード校がしっかりとAグラウンドへの切符を確保しているわけですが,ノンシードとの距離は縮まりつつあるのかな,という印象も持ちます。県北勢に対して,その他の地域が勝負を挑むというかつての図式からは離れ,各地域でトーナメントの勝負権をつかみうる,そんなチームが複数見えてきた,とも言えるでしょうか。そのなかで突出しているのが深谷高校で,恐らくトーナメントは彼らを中心にして動いていくでしょう。彼らに対して,どのチームが真っ向勝負を仕掛けていくのか(そして,近鉄花園への切符へと近付いていけるのか)。4回戦以降は,そんな見方をしていこう,と思っています。