対大宮戦(13−28)。

浦和が表現すべき要素は,何か。


 今節が明確に示してくれたのではないか,と思います。


 浦和は,攻撃的な要素を意識して戦い方を設計しているはずです。けれど,ここ数節は自分たちの戦い方に対する信頼が揺らいでいるかのような印象がありました。心理的な部分で,攻撃的な要素が抑え込まれてしまって,軸足を置いていないはずの守備応対面に意識が強く振り向けられていたように思うわけです。守備応対,という要素を意識するがために,戦い方に不安定さを抱え込んでいたチームが,自分たちの強みを再認識した,そんな印象です。


 大宮戦であります。ダービーマッチであります。


 中野田で,なかなか勝ち点3を奪えなかった対戦相手であって,スタンディングに関係なく「勝ち点3」を奪わなくてはならない相手,でありますが,今節はダービーという意味だけでなく,大きな足掛かりとなる勝ち点3ではないかな,と思っています。


 さて。相手の戦い方を重ね合わせながら,試合を振り返ってみますと。


 前回対戦時は,約束事が徹底されていた,という印象があります。徹底的に浦和の強みを抑え込み,「試合を壊す」ことを狙った約束事だったと思うわけです。では今節はどうだったか,と見ると,前回対戦ほどには約束事が明確には感じ取れなかった,という印象です。最終ラインから見れば,高いエリアからのファースト・ディフェンスが厳しく掛かってきても不思議はない,はずでした。けれど実際には,それほど強めのプレッシングがかかっていたとは思えなかったのも確かです。高いエリア,中盤でのフィルターがそれほど機能していないのだけれど,最終ラインは高めのライン・コントロールという意識を持っている。チームとして,ひとつの約束事で束ねられているとは感じられない,そんな戦い方でした。


 対して,浦和はどのような戦い方を意識してきたか。


 どこかで,ストリクト・マンマークも意識していたかも知れませんが,立ち上がりからの戦い方を見る限り,相手へのスカウティングを通じて最終ライン背後のスペースを突くことを約束事としていたように感じます。試合の主導権,という意味では,立ち上がりはなかなか落ち着かない時間帯だったように思いますし,相手に主導権を掌握されかねない,そんな局面もあったのは確かです。けれど,最終ラインの裏を突く,という狙いが早い時間帯での先制点奪取,という結果へと結び付きます。


 ゲーム・クロックが11:00という段階で,数的優位な状態になる。ともすれば,ここからの戦い方が難しくなるかな,と見ていたのですが,相手は戦術的なメッセージを戦術交代によって打ち出すのではなく,パッケージの微調整によって数的不利な状態をコントロールしよう,としたようです。この微調整,浦和にとっては大きな影響を受けるものではなかったように感じます。中盤でのプレッシャーが緩まったことで,もともと浦和が狙うビルドアップがスムーズに機能するようになっていたように思うのです。であれば,前半の段階で追加点を奪えなかった(試合を実質的に決定付けることができなかった)こと,は課題として指摘すべきでしょう。


 ハーフタイムを挟んで,後半も浦和が主導権を掌握していましたが,なかなか追加点を奪うことができなかったのも確かです。また,試合もオープンな展開へと変化してきていた。ワンチャンスが試合全体の流れを大きく変えてしまう,そんな可能性もどこかに見える時間帯だったかと思うのですが,反面でカウンターを仕掛けていきやすい,そんな時間帯であったのも確かです。ここで,攻撃ユニットは先制点を守りきる,という意識ではなく,相手の隙を突いてカウンターを仕掛ける,という意識を徹底していた。72分の追加点にしても,その後の追加点にしても,縦へのシンプルな攻撃から積み上げたものです。


 攻撃的な姿勢を貫くことで,「勝ち点3」を奪い取った。


 積み上げた数字も大事なのは当然ですが,どういう形で勝ち点を積み上げたか,がこれからのチームにとって大きな意味を持つのではないか,と思っています。26節にせよ,27節にせよ,(恐らくは,スタンディングの位置関係に起因する)心理的な部分が,戦い方に影を落としていたように感じられます。「確実に」勝ち点3を積み上げよう,という意識に傾いてしまった,といいますか。けれど,浦和の戦い方にあっては,勝ち点3を「奪いに行く」姿勢が最も大きな要素になっている,と思っています。この攻撃的な姿勢を貫き,実際に勝ち点3を奪ったことが,今節の最も大きな収穫ではないかな,と思うのです。