対甲府戦(13−26)。

引いて構える相手に対して,どのように戦い方を組み立てるか。


 具体的な約束事はピッチに表現されていた,ように感じます。感じますが,この戦い方は基礎的な部分だけが表現されていて,相手の戦い方に対応するための調整幅,のような部分が確保されてはいなかった,ように映ります。すべてを約束事で,というアプローチもあるかも知れませんが,ひとりひとりの判断で局面を打開するきっかけをつかむ,そんな姿が見えてくると,もっと戦い方が進化していくような印象です。


 相変わらず,遅筆堂な甲府戦であります。


 さて。今節を迎えるにあたって,チームはしっかりと戦術的な準備をしてきたことはピッチからも受け取れました。ただ,この戦術的な準備がしっかりと機能したか,となると攻撃面での機能低下を招いてしまった,と見るのがフェアかな,と思います。ブロックを構築して守備応対を仕掛ける相手に対して,中央から攻撃を組み立てるのではなくて,サイドを攻撃面での起点として意識付ける。そんな意識は確かに受け取れたのですが,あくまでもビルドアップ段階の話です。ここから相手守備ブロックに対してどうチャレンジしていくのか,という部分で,「足らざる部分」が見えていたように感じるのです。相手はトップとアタッキング・ミッドフィールド(インサイド・ハーフ)に対して,いい形でボールを呼び込ませないような守備応対を徹底していたように感じます。また,相手はブロックを崩すことなく守備応対を意識した戦い方をしていました。そのために,(なかなか平面視を具体的にはイメージしにくいのですが)相当に窮屈な視界でボールを動かしていたのではないか,と感じます。


 加えて,今節は神谷さんのコラム(J’s GOAL)で明確に指摘されていますが,パッケージ面もサイドを意識したものへと変更を受けています。センターの視界が窮屈であることに加えて中盤,セントラル・ミッドフィールドの部分が欠けた状態になる。そのために,中央を使ったチャレンジが選択肢から外れやすくなって,サイドからのビルドアップに必要以上に傾いてしまった側面があるかな,と思うわけです。この状態を何とか変化させるために,後半から啓太選手をピッチに投入したのかな,とも思うのです。


 センターの窮屈さをどのようにして打開するのか,という部分で見れば,どの局面でポジションを崩していくか,という部分が求められてくるのかな,と思います。たとえば相手の戦い方に対応すると,ひとが余る状態になる,と。そのときに,約束事を微調整して,仕掛けていける局面でポジションを崩してボールを持ち運ぶ。ひとりひとりが,チームの約束事「だけ」でなく,チームを機能させるための「約束破り」を仕掛けられるかどうか。特に前半段階で問われていたのは,この試合に向けての戦術的な準備,ではなくて,相手の戦い方を実際に見て,どの部分が相手に対して機能しているのか,逆にどの部分が機能していないのか,という判断であり,その判断に基づく戦術の微調整ではなかったか,と感じます。


 この微調整,という部分は先制点を奪ってからの戦い方にも当てはまるものと思います。


 相手は攻撃面でギアを変えてきたように感じます。その攻撃リズムに対して,浦和はそれほど対応方法を変化させたようには感じられなかった。相手の戦い方が変化してきているのだから,もともと準備していた戦い方を,相手の出方に応じて変化させてもよかったように思うのです。加えて,今節は自分たちで(より正確には,ベンチ・ワークが,と言うべきだと思いますが。)戦い方を不明確にしてしまった部分もあるように思います。表面的にも,パッケージ変更を伴うような戦術交代を仕掛けてしまった。好意的に解釈すれば,相手が縦にシンプルな攻撃を仕掛けてきた場合を意識して,「高さ」を補いたかった,ということかも知れませんが,この戦術的な交代はむしろ守備応対面での不明確さを導いたように思うのです。


 戦術的な部分での柔軟性と,ゲーム・マネージメントの部分で大きく軸足を踏み外すような戦術交代を仕掛けないこと。今節,失った勝ち点を意味あるものとするのならば,これらの課題を積み残しにすることは許されないものと感じます。