対新潟戦(13−24)。

戦い方に柔軟性を持たせる,少なくともひとつのきっかけ。


 軸足を不用意に外すわけにはいかない。いかないけれど,狙うフットボールでは局面打開が難しいときに,どのような“オルタナティブ”を用意できるのか。この課題を真正面から突き付けられたのが,横浜でのアウェイ・マッチだったように思います。


 今節にあっても,「浦和対策」をどう打ち破るか,という課題が提示されていたと見るべきでしょう。そんな相手に対して,いつもとは違う戦い方を表現することで「勝ち点3」を積み上げることができた。厳しいシーズンを戦っていくなかで,決して小さくない足掛かりである勝ち点3ではないか,と思います。新潟戦であります。


 ごく大ざっぱに,試合を前半と後半で2分割してみますに。


 前半は浦和としての戦い方,そのなかで浦和対策を打ち破るためのアプローチを模索していた,という印象を持ちます。各メディアでも指摘されていますが,今節の対戦相手はストリクト・マンマークな守備応対を徹底することで,浦和の攻撃ユニットを窮屈な状態へと追い込むことを意識していたようです。この窮屈な状態,ストリクト・マンマークを引き剥がすことができれば,数的同数は数的優位な状態へと変化していくわけですが,数的優位な状況へとなかなか持ち込むことができませんでした。むしろ,試合の流れとしては,相手が主導権を掌握しかけた時間帯があったように感じます。スコアレスで折り返すことはできたものの,決してリズムとしては浦和のリズムで動かしきれていない試合,という印象でした。


 この印象に変化が出てきたのが,後半です。


 ショートレンジ・パス,あるいはミドルレンジ・パスを基盤にしてポゼッションを意識した戦い方を組み立てるのではなくて,意図的にロングレンジ・パスを基盤にして戦い方を組み立てたように映ります。自分たちがボールを保持するのではなくて,相手にボールを敢えて保持させる戦い方へのギアチェンジを仕掛けてきたわけです。


 この戦い方のギアチェンジ,この日の気象条件も大きく影響していたように思います。


 北ゴール裏に設置されている大型ディスプレイ,その上部に設置されているポールに掲揚されるフラッグは,冬の季節風を思わせる風向を示していました。であれば,前半の浦和は攻めおろす形であって不思議はないはずだ,と。でも実際には,攻め下ろしているように映るのは対戦相手でした。コーナーポールを観察してみると,ピッチレベルでは逆方向,南ゴール裏方向から北ゴール裏方向へと風が吹いている,そんなコンディションでした。


 この強風を,どのように戦い方へと組み込むか。


 今節にあっては,「数字」が戦い方のギアチェンジを明確に示していたように思います。前半終了段階と比較して,後半での浦和のポゼッション率は明確に低下していました。風上方向から風下へと攻め下ろせる,そんなエンドに変わったことが,戦い方を変化させるきっかけだったのかな,と思います。


 フットボールは,自然を味方につける必要がある競技,という側面があるように思います。今節もある意味,風が鍵を握っていたように思います。前半,相手に主導権を掌握されていたように感じるのは,もちろん相手が浦和対策を戦い方に落とし込んできたこと(ストリクト・マンマークな守備応対を徹底していたこと)もありますが,風の存在を意識したパスを意識していたこと,にもあるように思います。この風を,浦和としても利用していかなくてはいけない。戦い方,というと,どうしても狙うフットボールを基準にして考えたくなりますが,自然条件をも味方につける戦い方,となると,必ずしも狙うフットボールが最適解とは限らない。


 ロングレンジ・パスが,「浦和対策」への処方箋となりうるか。直線的に繋ぎ合わせるわけにはいかないのかも知れませんが,戦術面での柔軟性が,少なくともチームの難しい状況を打開する,大きなきっかけであることは証明できている。今節の「勝ち点3」は物理的な意味だけではない意味がある,ように思うのです。