対広島戦(13−19)。

いわゆる,「勝ち点6」の意味を持った試合であります。


 首位との勝ち点差を縮めることができるか,それとも勝ち点差が広がってしまうのか。タイトルを現実的な目標とするためには,この段階で首位との勝ち点差を縮めておくことが重要な課題であるはずですし,その意味からも大きな意味を持った「勝ち点3」であることは間違いありません。と同時に,チーム・コンディションを取り戻すためのヒントがあった試合ではないかな,と思います。


 相変わらず更新頻度が上がらない(そして,まだまだ上げられる環境にない)のでありまして,であればいつも以上に遅筆堂でありますが,の広島戦であります。ちょっとばかり時期が悪くもありますので,試合内容そのものを追う,というよりも,感じるところを書いておこう,と思います。


 さて。各方面で指摘されていますが,やはり啓太選手がスターターに戻ってきたこと,その効果が大きかったという見方がフェアだろう,と思います。


 セントラル・ミッドフィールドに啓太選手が戻ったことで,ピッチの各エリアで描き出されるトライアングル,そのバランスが整ったように感じるわけです。たとえば,最終ラインと後方ビルドアップをしている局面でも,縦の距離感が縮まりすぎることなくボールを動かすことができていたような印象です。ここから攻撃へと移行していく局面でも,攻撃ユニットとの距離感が悪いエリアからボールを繰り出すような形は最低限に抑え込まれていて,攻撃ユニットとの距離感を詰めてからボールを繰り出す形を強く意識していたように感じます。もちろん,早い時間帯で先制点を奪い,自分たちの狙う形で試合を動かせるようになっていたこと,相手が高いエリアからプレッシャーを掛け与えるという形へとシフトすることなく,ビハインドを負いながらもチーム・コンセプトから外れずに戦っていたことも作用しているはずですから,一定程度差し引いて考える必要はあるでしょう。であるとしても,ここ数節浦和が見失いかけていた戦い方の基盤を,再認識するきっかけには少なくともなっているのではないか,と思うところです。


 加えて,「縦方向の変化」が明確になっていたようにも思います。


 今節は,(守備応対面の約束事など,ディテールでの相違点はあるものの)基本的な部分で同じコンセプト,パッケージを採用するチームとの対戦でしたから,1on1での局面打開が大きな意味を持つ,そんな試合でもあったはずです。であれば,(的確な状況判断が当然の前提にはなりますが)縦方向への変化,相手守備ブロックのマーキング(役割を明確にしていれば,同じパッケージのチームと対峙するわけですから,誰が誰を受け持つか,が分かりやすいはずです。)を剥がし,数的優位な局面へと持ち込もうとする戦術的な意識は大きな鍵になります。この鍵をしっかりとピッチに表現していたように思うわけです。その意味で,いまの浦和にとってチーム・コンセプトを明確に表現するにあたり,どうしても欠くことのできないフットボーラー,そのひとりが啓太選手である,ということもできるかな,と思うわけです。


 そしてもうひとつ。コンディションを取り戻すきっかけになるかな,と思うのは「戦い方のバランス」をチームが再認識したのではないか,ということです。


 今節,浦和は「相手が嫌がること」を意識して戦い方を組み立ててきていたように思います。自分たちが持っている強みを表現する,という要素を抑え込んでいたとは思わないけれど,自分たちの強みを表現するために,相手の強みを封じ込める,というステップを意識していたように思うのです。このバランスが,前節以前の数節は,「自分たちの強み」であったり「自分たちの表現すべきフットボール」に意識が傾いてしまっていたのではないか,と思っています。そのために,相手を自分たちの形に嵌め込む前に,相手が仕掛ける罠に掛かる,その後手を精算するために大きなパワーを使うことになる(パワーをうまく伝えられないと,さらなる悪循環に嵌り込む),という形になっていたように思うのです。


 浦和の強みは,確かに攻撃面にある,とは思います。思いますが,この攻撃面を生かすためには,いい守備応対という前提条件がないといけない,と思いますし,そのためには「相手がどう戦い方を組み立ててくるか」という要素を落としてはいけない,とも思います。相手の戦い方を潰すと同時に,自分たちの戦い方へと引き込む。そのための意識のバランスであったり,戦術面でのバランスをどう取るか,そのひとつの解が今節の戦い方にはあったのではないか,と思っています。