サー・アレックス、勇退。

かつて,勇退をほのめかしたことがあったような。


 いつだったか,正確な時期は思い出せませんが,オールド・トラフォードダッグアウトから離れる,という意思をちょっとだけ見せた,そんな時期があったような記憶があります。実際には,早い段階で翻意されて,いまに続くわけですけれど。恐らく,このことがあってかな,と思うのですが,このひとには常に「引退時期はいつなのだろうか」ということがついて回るようになった,ようにも思うのです。


 今回は,こちらの記事をもとに,サー・アレックスの話を短く書いていこう,と思います。


 退任へ,などとUKメディアでは報じられていたようですが,今季(2012〜13シーズン)終了をもって,マンチェスター・ユナイテッドを退団,と同時に監督業からの引退をする,とのことです。


 サー・アレックスのユナイテッドでのキャリア,そのすべてをリアルタイムで知っているわけではありませんが,個人的な印象として,稀代の戦術家というイメージはそれほど強くありません。戦術的な部分で見るならば,ファーガソンさんよりも,ファーガソンさんを支えてきた歴代のアシスタント・コーチ,彼らの手腕に負う部分が(あくまでも相対的に,ですけれど。)大きいのではないかな,と個人的には見ています。むしろ,ファーガソンさんがその能力を発揮していたのは人心掌握術の部分にあったのではないかな,と思うのです。規律を重要視し,規律を踏み外す者には容赦ない。反面で,チームを戦う集団として束ね,容易に分解させることがない。


 「瞬間湯沸器」にして,人心掌握術に長けた「鬼軍曹」。


 これほどに強い個性を持った,そして長期間にわたってひとつのクラブを率い続けた指揮官は,なかなか出てこないのではないかな,と思います。


 後任については,さまざまなひとの名前が出てきています。たとえば,ちょっとガーディアン紙を斜め読みしたところでは,エヴァートンのマネジャーであるディビッド・モイーズさんやレアル・マドリーを退任する(らしい)ジョゼ・モウリーニョさん,あるいはボルシア・ドルトムントで指揮を執るユルゲン・クロップさんやマラガを率いるマニュエル・ペジェグリーニさんなどの名前が書かれています。ジョゼさんについては,かつてファーガソンさん自身が後任に,などというニュアンスのコメントをしたこともあったように記憶していますが,ラファエル・ベニテスさんも記者会見で指摘していたように,オールド・トラフォード,ではなくてスタンフォード・ブリッジダッグアウトを再び仕事場とするのではないか,チェルシーへの復帰が既定路線ではないか,と見る向きもあるようです。香川選手のことを意識してみるならば,ユルゲン・クロップさんというのも悪くないのではないかな,と思ったりします。


 いずれにせよ。2013〜14シーズンに向けたメルカート,フットボーラーのメルカートではなくて,監督さんのメルカートは相当に賑やかなことになりそうです。