対C大阪戦(13−10A)。

相手を,自分たちのフットボールへと嵌め込むこと。


 嵌め込むのみならず,ゴールネットを揺らすこと。


 現段階にあっては,相手を嵌め込むことと,ゴールネットを揺らすこととが,うまく繋がっていないような印象があります。狙うフットボールを,どんな相手であっても表現できる,その前段階には入ってきているのかな,と思うところは確かにあります。ありますが,「相手が嫌がるフットボールを表現する」という側面から見ると,必ずしも相手が嫌がるフットボールにはなっていない,そんな時間帯があるように感じます。


 アウェイ・マッチなC大阪戦,であります。今回もまた,ちょっとだけ思うところを書いておこう,と思います。


 ここ数節に共通する印象ですが,浦和が狙うフットボールへと相手を引き込む,その「前段階」が落ちかけているかな,と感じるところがあります。対戦相手は,浦和がどのようなフットボールを狙ってきているか,具体的な対策を戦い方に落とし込むかどうかは別として,把握はしているはずです。この段階で,ビルドアップまではスムーズに機能している,となれば,最終的なフィニッシュにかかる,その前段階をしっかりと抑え込むことに意識を振り向けている,という見方もできるはずです。


 軸足を外して,現実的な戦い方だけに意識を振り向ける,その必要性はない,と思っています。フィニッシュでの精度であったりコンビネーションの正確性(フィニッシャーが持っている強みを引き出すためのパスの角度やレンジ,強さなど,当然“インテリジェンス”の出番でもありますが。)など,突き詰めるべき部分を徹底的に突き詰める,その必要性は揺らがないし,揺るがせてもならない,と。


 そうではなくて,相手を自分たちの戦い方へと嵌め込むための,言わば「予備段階」を正確に描いておく必要があるかな,と思うわけです。


 昨季はある意味,守備的に「立ち上がらざるを得なかった」かも知れません。知れませんが,慎重に相手がどう出てくるのか観察する,そのための時間帯として立ち上がりの時間帯が利用できたように感じるのも確かです。いい攻撃を仕掛けるために,いい守備応対を,という意識がチームにバランスをもたらしていたように思うのです。


 対して今季は基盤が強化された,という印象は確かにあります。けれど,そのために「相手の出方を見る」時間帯が短くなってはいないか,と思うところがあります。相手がどのような戦い方を狙っているか,浦和の戦い方を意識して,どのエリアに網を張っているか,しっかりと確認する時間帯が短くなっていて,「自分たちの戦い方」だけに意識が傾いていってはいないか,いい攻撃を仕掛けるために,いい守備応対を繰り返す,という意識が,いい攻撃という方向だけになりかかっていないか,と思うのです。相手の戦い方を観察し,弱点を的確に突いてミスを誘発させる,のではなくて,自分たちがある意味,「無防備に」自分たちの戦い方だけを押し出し,ミスを誘発「させられている」,そんな図式に持ち込まれているように映るのです。


 ごく当然のこと,ですが,先制点を奪って流れを引き寄せるか,それともビハインドを背負った段階から自分たちの戦い方へと流れを引き戻すか,は「勝ち点3」を積み上げるにあたって,大きな差があると思っています。今節は,ビハインドを背負った状態から試合をイーブンの状態へと戻し,さらにはリードを奪ったわけですから,反発力が見えてきたことは収穫です。ではあるのですが,ゲーム・マネージメントという部分から言えば,そもそも「反発力」を使わなくてはいけない試合展開を避けるべき,となるはずです。


 勝ち点を積み上げられない状態から脱した。ポジティブなこと,です。自分たちの戦い方に対する信頼も大きく揺らいでいるようには感じられない。これもまた,ポジティブなこと,です。けれど,相手の戦い方を実際にチェックする,ある意味慎重な試合の入り方,という部分はここ数節に共通する課題ではないかな,と思っています。