対清水戦(13−08)。

強めにパスを繰り出せる,前半段階が大きな鍵だったかな,と。


 もうひとつ。トップにボールを収めるひとつ前,あるいはそれよりも前の段階で積極的にゴールマウスを狙うこと,も鍵だったかな,と。そして,エンド選択も隠れた鍵であったように感じます。


 ひさびさに1日遅れに戻りました,の清水戦であります。今回は自然条件を意識しながら,試合を振り返ってみよう,と思います。


 今節は,季節を巻き戻したような強風が北ゴール裏方向から南ゴール裏へと吹き抜けていました。風だけで考えるならば,4月下旬の試合日程と言うよりも,リーグ戦が終わったあと,たとえば天皇杯の試合が中野田で開催されるときに競技場を吹き抜けていく風,その風と似た印象があったわけです。


 この風を使って,攻め下ろす方が有利か,それとも攻め上げる方が有利に働くか。いまの浦和の戦い方であれば,むしろ攻め上げる時間帯に勝負を決めておく必要がある,ということになるかも知れません。そして,今節は風上へと攻め上げていく形は前半だった。


 今節の対戦相手は,現実に軸足を置く戦い方を意識していたのではないでしょうか。守備応対面での決定的な破綻を最低限に抑え込み,ワンチャンスを狙う,と。相手がこのような戦い方を意識していたとすれば,ワンチャンスを狙う,というゲーム・プランを崩すためには早い時間帯での先制点奪取が求められます。この試合での鍵,だったかも知れない要素はミドルレンジからのシュートではなかったかな,と思うのです。


 相手の戦い方を振り返るに,前半段階ではチームとしてボールをどのようにして奪い,攻撃へと切り替えていくのか,という部分でチームの意識が整っていたとは感じられませんでした。反面で,守備ブロックの安定性は前半段階でもそれほど崩れてはいなかった。ボールを奪う,という部分での意識は整ってはいなかったかも知れないけれど,守備応対面でのイメージまでが整っていなかった,とは言いにくい。この守備ブロックを引き出すためにサイドを使って,という意識を浦和は強めていったのだろう,と見ていますが,もうひとつ,センターで「スカウティングを超える」要素が必要だった,と感じます。ミドルレンジから仕掛けていくこと,です。


 今節は,ポゼッションできている,という感触(実際には,感触ではなくて数字としてもポゼッションできていることを示す数字がディスプレイに表示されていましたが。)が「手数を増やす」という方向へと,チームの意識を傾けたのかな,と思います。サイドで数的優位を構築して,守備ブロックを引っ張り出す。引っ張り出したタイミングで,センターを崩しに掛かる。精度,という課題が今節でも指摘できるかな,と思いますが,パスを引き出したいタイミングと,パスを出すタイミングが微妙にずれる。連戦,の影響が,攻撃ユニット,と言いますかチームとしての戦術イメージに,微妙なズレを生じていたように感じます。そのためか,サイドからセンターを崩しに行く,という意識が結果的に強くなり過ぎた部分があるように思うわけです。リスク・マネージメントという要素にウェイトが掛からなくなって,チームが前掛かりに仕掛けてしまう。このタイミングを,相手は狙っていた。


 先制点(にして決勝点)を奪ったことで,相手は恐らく,チームとしてどう戦うかが明確になったのではないでしょうか。チームが違う方向を見ているのではないか,という印象が薄くなった。よりシンプルに,縦を狙うという方向を打ち出すようになった。


 相手が守備ブロックの安定性を意識してゲーム・プランを組み立てていたことは,特に後半においてはかなり明確に見えていました。このブロックを何とかして動かしたい,という意識は重要ですが,その意識が「手数を掛ける」であったり,「ひとを掛ける」という意識と直線的に結び付き過ぎたかな,と感じます。先制点を奪われてからも,数的不利に陥ってからもボールを動かすことはできていたのだけれど,ボールを動かすことと相手を引き出すこと,が繋がらなかった。であるならば,相手を引き出す,引っ張り出すために手数を減らす形があってもいいし,ポジション・チェンジによって相手のマークを混乱させる形があってもいい。


 今節を,“Not our day”という言葉で説明したくなるところも,ないではありません。


 ありませんが,今節のような状況は再び訪れるはずです。そのときに,同じ言葉を持ち出すわけにはいかない。連戦による影響で,チームとしてのコンディションが上がりきらないこともあるはずです。そんなタイミングに,「浦和対策」を徹底してくるチームと対戦することもあるはずです。そのときに,相手の浦和対策を乗り越えるために,突き詰めるべきを突き詰め,付け加えるべきを付け加える。今節,積み上げることのできなかった「勝ち点3」,それ以上の意味が今節の敗戦から導かれるだろう課題にはあるはずだし,今季のチームは難しい課題であってもクリアできるはずだ,と思っています。