対磐田戦(13−05)。

チームは確実に,進化している。


 そう実感できる試合ではなかったかな,と思います。


 相変わらず遅筆堂で申し訳ありません,な磐田戦であります。


 さて。今回は対戦相手が描いた(かも知れない)ゲーム・プランを推理することからはじめてみよう,と思います。


 積極的に「勝ち点3」を奪いに行くのではなく,浦和の攻撃を守備ブロックの位置で抑え込むこと,浦和に先制点を奪われないことを強く意識付ける。ワンチャンスを見逃すことなく得点を奪い,試合をコントロール(この場合,「壊す」という言い方もできるかも知れません。)する。アウェイであっても積極的に勝ち点3を狙う,相手の強みを抑え込むよりも,自分たちの強みを強く押し出そうとするクラブが多いJリーグですが,今節の磐田は「欧州的なアウェイ」の戦い方を狙っていたように思うのです。


 実際のゲーム・プランがこの推理に近いものだとすれば,必ずしも磐田はプラン通りに試合を動かせてはいなかったのではないか,と思います。守備ブロックを安定させる,という意図は少なくとも受け取れましたが,その守備ブロックに,どうボール・ホルダーを引っ張り込むのか,という形での守備応対が徹底されているとは感じられなかったのです。守備的,という言葉が,チームとして共有できていなかった,と言うこともできるでしょうか。そのために,浦和は立ち上がりの時間帯から主導権を奪い,試合を動かすことができていました。先制点を奪い,さらに試合を動かしやすくするチャンスをつかみもするのですが,実際にはこのチャンスを生かすことができなかった。


 決定機をゴールに結び付けることができず,逆に先制点を奪われる。


 昨季ならば,相手が狙う戦い方へと嵌り込んでいく典型的な形だったように感じますが,今節の相手は先制点を奪ってからの戦い方もまた,明確なものではなかったように思います。守備ブロックが浦和の攻撃ユニットを抑え込む,という意識は揺らいでいないものの,チームとしてどのように守備ブロックへと追い込むのか,という戦術的なイメージが曖昧なままで残ってしまった。戦術交代を振り返ってみても,チームの意識をひとつの方向性へと整える,という印象を受けるものではありませんでした。そのために,先制点は奪われたものの,試合の主導権を相手に持って行かれている,という印象はなかったのです。


 先制点を奪われてはいるけれど,自分たちが描くべき戦い方を,しっかりと表現できている。ならば,戦い方を大きく変える必要はない。変えるとするならば,相手守備ブロックのバランスを崩しに行くために手数をどう付け加えるか,あるいは手数をどこで差し引くか,が求められていたかな,と思います。


 その意味で,ボール・ホルダーの視界に収まるための動きが,今節はワンテンポ早い段階で求められていたかな,と思いますし,ボール・ホルダーも,シンプルにボールを動かす,というよりも,動かす前の視界が重要性を持っている,そんな試合だったように感じます。相手を揺さぶるためのワンアクションであったり,パスを呼び込む(と同時に,マークに付いている相手に裏を意識させる)ための短距離なフリー・ランなどが求められていたように思うのですが,今節はいつも通りのリズムでパスを引き出す動きをしていたり,パスを繰り出す側は厳しめのチャレンジ・パスを仕掛けてしまう,そんな局面が見えていたように感じます。加えて書けば,攻撃の組み立て段階での左右バランスが左方向に傾く形がはっきりしていたために,相手守備ブロックをサイドに釣り出すとしても,右がなかなか効果的に使えていなかったために相手守備ブロックを左右方向に引っ張り出しきれなかった,という部分もあったように思います。


 ゴール,ということを思えば,単純な課題とも言えますが,単純であるがゆえに難しい課題かな,とも思います。ただ,チームとして表現しなくてはならないことが明確に表現できている,と感じますし,昨季の蓄積が今季の表現度に見えている,と感じます。そして,昨季にはなかなか表現しきれなかった,「勝負強さ」という要素がリスタートやカウンターという部分に見えてきているように思います。狙う戦い方への信頼を,「結果」という要素が揺るがせてはもったいない。それだけに,昨季なかなか見ることのできなかった形から得点を奪い,「勝ち点3」という足掛かりを積み上げたことは,決して小さくない意味を持っているように思います。