FT-86 OPEN CONCEPT.

どうして,ターボ・エンジンではなかったのか。


 そんな感想を持たれるひとも少なくない,ようです。


 WRXのエンジンが積まれていれば,もっと魅力的だったのではないか,と。なるほどそうかも知れない,とは思いますが,現実的には難しい部分も多いだろうな,と思います。まず,エンジン・ルームがターボを搭載するにはちょっとばかり小さい。もちろん,ターボ・チャージャーそのものが収まらない,という意味ではなくて,ターボ搭載に伴う補機類の取り回しができるだけの大きさを持っていないのではないか,と思うのです。加えて書けば,放熱性の問題もあるでしょう。ターボチャージャーを取り付ければ,熱源が増えます。エンジンルームの温度も上がります。となると空気を取り込むだけでなく,空気を効率的に「抜く」必要があります。エンジンルームの冷却も,大事な要素になるだろうと思うのですが,するとデザイン面にも手を入れる必要が出てきたりする,かも知れません。


 絶対的なパワーがそれほどなくても,楽しさを感じられるならば。


 そのためのひとつの方法は,「屋根を取り去る」ことかも知れません。



 今回はフットボールを離れて,こちらの記事をもとに書いていこう,と思います。


 ジュネーブショーに出展される,“FT−86オープンコンセプト”であります。


 コンセプト・モデル,という位置付けではありますが,すでに量産を視野に入れているプロトタイプ,と見ていいようです。コンセプト,あるいはデザイン・スタディですと,どこかにコスメティックな要素が落とし込まれているのですが,このオープン・コンセプトを見る限り,ショー・モデルとしてのコスメティックは最低限に抑え込まれているようです。


 個人的な興味は,メタル・ルーフを採用するつもりなのか,それとも軽量化を意識してキャンバス・トップを採用するのか,という部分であります。オープンはどうしても,クローズドと比較すると重量が重くなる傾向にあります。剛性面で大きな役割を担っているルーフを取り去っているから,どうしても補強が必要,というわけです。


 そこで,トヨタ,そして富士重工はどう考えるのかな,と思うのです。


 軽量化を優先するのか,それともクローズド状態でクーペとほぼ変わらないライド感を確保するか,です。恐らく,トヨタ富士重工は,オープン化に伴い,ボディ補強を施してくるはずです。追加で剛性部材を投入したり。この剛性部材分の重量をどこかで補いたいと思えば(軽量化を優先するのであれば),キャンバス・トップもあり得る話です。対して,クローズドでクーペ並みの剛性感を,となれば,メタル・ルーフの採用も一策でしょう。現段階においては,“オープンコンセプト”という名前であって,ロードスターであるとも,コンバーティブルであるともリリースされていません。たとえばロードスターであるならば,軽量化にこだわったトップの選択,もありましょうし,コンバーティブルであれば,耐候性や快適性を意識したトップ,という可能性も出てきます。リア・セクションを見る限り,どちらの可能性もあるのかな,と思いますが,個人的にはキャンバス・トップが気分かな,と思います。


 いずれにしても。楽しみな追加モデル(の予告編ではありますが。)であります。