サントリー・サンゴリアス対東芝ブレイブルーパス戦(12〜13TL・POT決勝戦)。

厳しい守備応対を,組織として徹底できたこと。


 5mエリアでの守備応対が試合を通じて緩まなかったことが,大きな鍵になっていたように感じます。と同時に,厳しい守備応対を繰り返していながらも,ほぼフルコート・カウンターな攻撃を仕掛けられるだけのフィットネスを試合終盤にも維持できている。前任指揮官であるエディさんが培ったもの,今季からチームを預かっている大久保さんがチームに落とし込んだ要素がいい形でミックスしたような,そんな印象を持っています。


 日曜日の秩父宮,POT決勝戦であります。


 さて。まずはブレイブルーパスから振り返ってみます。


 決勝戦ですから当然,とも言えますが,やはり紙一重,という印象が残っています。けれど,局面ベースの差が紙一重であるとしても,結果としてはトライを奪えていないわけですし,僅差はしっかりと積み重なってしまった,と言うべきかも知れません。


 この僅差,ひとつにはサンゴリアス守備ブロックに隙を生むためのワンアクションがなかなか表現されなかったことに求められるかな,と思いますし,ひとつにはサンゴリアスに対策を立てられてしまったモールからの攻撃に求められるではないかな,と思います。


 ブレイブルーパスは,縦への破壊力を持った攻撃を仕掛けられる,という印象を確かに持っています。実際,試合後半はかなりボールを自分たちのリズムで動かせていたし,相手を自陣に釘付けにする,そんな時間帯が多かった。相手を2回シンビンへと追い込んでもいたわけですから,決して攻撃の圧力が弱かったわけではない,と思います。けれど,その圧力をもってしても5mエリアからゴールエリアにつながる部分を攻略できなかった。


 サンゴリアスは,このエリアでの守備応対が徹底していたわけです。


 ボール・キャリアに対して付いていきたいタイミングでも無理に飛び込まず,数的なバランスを維持しながら縦を狙うタイミングを潰す,そんな守備応対をサンゴリアスは繰り返していました。この守備応対に対して,ブレイブルーパスはファウルを自分たちから誘発することでリズムを失ってしまうことで,詰めるべき部分を詰めることができなかった。相手守備ブロックを剥がす,あるいは隙を自分たちから突くためのアイディア,ワンアクションが見えてくると局面は違ったのかな,と思いますが,そういう局面を見ることはできなかったように思います。


 対策を具体的に立てられ,抑え込まれたという意味では,ラインアウトからのモールがなかなか機能しなかったという要素も大きいかな,と思います。サンゴリアスは,ブレイブルーパスが何を武器にして5mからの攻撃を組み立ててくるか,その攻撃に対してどのような対策を取ればいいのか,具体的にイメージしていたように思います。リズムを握らせないために何をすべきか,具体的なイメージを持ってフィールドに入っていたように思いますし,ブレイブルーパスサンゴリアスが立てた対策からなかなか抜け出すことができなかったように感じるわけです。FWに対して相当な警戒感を持っていたこと,後手を踏めばリズムを握られる,という意識をサンゴリアス・サイドが持っていただろうことは,スクラムの局面で強く感じられました。より低く,鋭くスクラムに入りたいという意識であったり,相手のリズムでスクラムを組まれたくない,という意識がファウルになっていたように思います。その警戒感が,モールへの対策という形になっていたように思うのです。


 で,サンゴリアスでありますが。


 日曜日のサンゴリアスは,昨季の決勝戦とはちょっと違って守備応対を基盤に試合を動かす,という意識だったかな,と見ています。特に試合後半はシンビンを2回取られるなど,難しいゲーム・ハンドリングを強いられる時間帯もあったかな,と思うのですが,相手に対して鋭く,厳しく守備応対を仕掛けていく,という意識が弱まることはありませんでした。高いエリアを維持する,という形ではありませんでしたが,5mエリアでの守備応対は安定感があった,と思います。そこで大きな鍵になったのが,昨日のエントリでも取り上げた,TMOとなったモールへの守備応対ではないかな,と思うのです。


 モールから鋭く,トライを奪うべく縦を突く。


 この形が実際にトライ奪取へと結び付けば,試合の流れは大きく変わったかも知れません。けれど実際には,ボールをコントロールしていたのはサンゴリアスの選手です。ギリギリの守備応対,であったとは思いますが,この守備応対によって相手への流れを抑え込むことに対する確信が深まったのではないかな,と感じるわけです。そして,守備応対に回る時間帯が長かったにもかかわらず,カウンターを仕掛ける姿勢が失われていたわけではなかった。ボール・コントロールを奪うと,鋭く縦を狙っていく。長距離を走り抜けることのできるフィットネスが,試合終盤にあっても表現できる,そんな戦術交代であったり,ゲーム・コントロールができていた,という部分で,小さくはあるかも知れませんが確実な差があったのかな,と思うところです。


 シーズン無敗での戴冠となったサンゴリアスでありますが,彼らの代名詞となってきた攻撃面だけでなく,守備応対面が強く印象に残る,そんな決勝戦であったように思います。