16年ぶりの戴冠(全日本総合選手権・決勝戦)。

このチームでできるのは,これが最後。


 どんなチームであっても,シーズン最後のゲームならばこんな意識を持つだろう,と思います。契約のこともあるし,現役を退く,ということもあるでしょう。けれど,「最後」という言葉の重みが,圧倒的に違う。


 今回はフットボールを離れまして,ちょっとバスケットな話など。16年ぶりに総合選手権を制した,パナソニックトライアンズのことをちょっと書いていこう,と思います。


 試合の流れを追っているページ(第88回全日本総合選手権オフィシャル)を見ても分かるように,前半段階(第1,第2クオーター)では,先手を取ったアイシン・シーホースに対してなかなか後手を精算できない状態でした。得点差にしても,詰めていけるという感触がなかなか強められなかった,という感じでしょうか。


 第2クオーター終了段階でのスコアは26−40。シーホースに対して,14点差を付けられていたのです。この流れが変わってくるのが,第3クオーターです。ゲーム・クロックが残り1分25秒を示している段階で,はじめてシーホースに対してリードを奪うことに成功します。結果的に,第3クオーターではリードを奪いきれないのですが,それでも勝負権を失ってはいない,という感触をこの第3クオーターで感じられたものと思います。そして,得点の奪い合いとなった第4クオーターを制して,全日本総合選手権を,16年ぶりに制することに成功するのです。


 フットボール・フリークとしては,どうしても国立霞ヶ丘での光景が重なって見える,そんな決勝戦です。けれど,決勝戦の印象だけを取り出すとちょっと違うかな,とも思います。あのときのフリエは大住さんがかつて自身のコラムで書いておられたと思いますが,フリエが歩んできた歴史,その歴史で培ってきたスタイルが見えるような戦い方で,あの小さなカップへと駆け上がっていったように思います。対してトライアンズは,この決勝戦で後手を踏み,その後手を何とかクリアしようともがき苦しみながらチャンスをつかみ,そのチャンスを手放すことなく逃げ切った,という印象を持ったりするのです。


 それでも,やはりトライアンズにフリエの姿を重ねてみてしまう,というのも確かです。


 16年ぶりの戴冠,ではあるけれど,この記録を来季更新することはできません。1951年創部,1967シーズンからトップリーグを主戦場としてきたチームは,今季でその歴史にピリオドを打つことが決まっています。文字通りの最後のシーズン,何としても遠ざかっていたタイトルを奪いたい。その思いは,背負っていたビハインドを跳ね返すためのチカラになってくれた,かも知れません。