対広島戦(12−32)。

相手の強みを潰すための,戦術的な微調整。


 4を主戦とする相手ならば,物理的に強みを潰しに行ける,そんなパッケージで今季を戦っています。けれど,今節の相手は可変型の3を操る,同じ戦術的な狙いを持ったチームです。戦術的な部分での熟成度を真正面からぶつけ合う形にしてしまえば,熟成期間という問題を結果に結び付けられてしまうことにもなりかねません。


 相手の強みを抑え込むことで先手を打ちたい。


 そこで指揮官が考えたのが,守備応対面での微調整だったように感じます。いつも通り,よりも1日遅れておりますが,の広島戦であります。


 さて。相手の強みを抑え込むための微調整であります。


 ゾーン・ディフェンスからマンマーク・ディフェンス,ストリクト,と言うにはエリアが限定されていたかな,と思いますが,マーカーを強く意識した守備応対へと守備意識を切り替えていたように思います。


 ここまでの戦い方を振り返るに,相手に数的優位な局面に持ち込まれている(決定機をつくられている)ときはゾーンを意識した守備応対,守備ユニットでのマークの受け渡しが曖昧になっていた印象があります。ゾーン・ディフェンスを崩して相手ボールホルダーへのアタックを掛けていい局面,アタックを仕掛けていくべきエリアであってもなかなかアタックが仕掛けられない,という形が見えていたように思うのです。ゾーンへの意識が強い,ということのネガティブかも知れませんが,ゾーンへの意識を崩すタイミングが遅れがちになってしまって,結果として深めの守備応対になってしまう(相手がプレッシャーを受けずにボールを動かせるエリアを提供してしまう)形が見えてしまうように思うわけです。同じ戦術的な狙いを持つ相手ならば,恐らくこのウィークポイントは意識しているでしょうし,このウィークポイントを的確に突いていこうとするはずです。


 同時に,縦方向の循環を止める,と言いますか,縦を一方通行にすることが,マーカーを強く意識する守備応対へと微調整した,その理由になっているように感じます。縦に仕掛けていく,その初期段階を抑え込むために高い位置からのアプローチを仕掛け,同時に守備ブロックはマンマークな守備応対へと切り替える。この微調整が,今節における大きな鍵だったように思います。


 対して,攻撃面ではシンプルさが印象に残る,そんな試合ではなかったかな,と思います。


 浦和も相手も同じ戦術的基盤,守備応対時のパッケージから攻撃時のパッケージを変化させる3を採用しています。それだけに,相手守備ブロックに時間を与えてしまうと数的優位な局面がつくりにくくなる,ということになります。相手がブロックを構築してしまえば,そのブロックを揺さぶるためのプラスアルファが必要になりかねませんし,となると守備応対面でのマークが外れるタイミングが出てくることにもなりかねません。相手の縦を分断している状態が崩れる,そのリスクを背負うことにもなりかねません。であれば,ロングレンジの相手守備ブロック裏を狙ったパスから,コースを狙ったシュートで先制点を奪取することに成功した局面にせよ,守備ブロックが積極的な攻撃参加からピンポイントなトラバースをセンターに送った局面にせよ,そして中央を大胆に駆け上がり,縦の突破をフィニッシュ(追加点の奪取)へと結び付けた局面にせよ,今節にあってはシンプルさが鍵を握っていたように感じます。


 相手の強みを抑え込む,という方法論を落とし込みながら,同時に自分たちの強みを引き出していく。今季の浦和はどちらかと言えば,このアプローチをすべてのゲームにおいて採用していたわけではないように感じています。4を主戦とするチームが多いという部分を思えば,パッケージがもともと持っているギャップ,4に対するアドバンテージをピッチで的確に表現するためのアプローチを徹底していたように思うのです。けれど,4の使い方を3的にするなど,浦和が狙うフットボールを研究することで,強みを抑え込もうとするチームも出てきましたし,高みを狙える位置にいる,という意識が硬さを呼び込んだのか,なかなか自分たちのフットボールへと相手を引き込みにくくなっていた部分もあるように思います。


 自分たちのフットボールへと相手を引きずり込むために,どのような「前段階(準備)」が求められるのか。今節は戦術的な指向性が同じチームでしたから,前段階がわかりやすかったように思いますが,この前段階,戦術的な広がりを活かすためには大きな要素になるように思います。失速状態から脱する,そのきっかけとしての「勝ち点3」の重みもあるかと思いますが,それ以上に戦術的な広がりへの大きなヒントが今節にはあったように思いますし,「勝ち点3」は決して小さくない手応えになったのではないかな,と思います。