第92回全国高校ラグビー埼玉県予選(3回戦概論)。

比較的,実力差が結果に反映されやすい競技。


 と書いておりますし,そういう印象もあるわけですが。


 明確な実力差,と言うよりも,ちょっとした「僅差」が積み上がってしまうのか,それともちょっとだけ積み上げた段階で踏みとどまれるのか,という部分が作用するようにも思うのですね。そして実際には,なかなか踏みとどまるのが難しい,と。


 さて。高体連ラグビー専門部さんのページをもとに,高校ラグビー県予選の話を書いていこう,と思います。3回戦で指定されるCグラウンドは,観戦エリアとダッグアウトがかなり接近していて,コーチング・スタッフが実際にどのような指示を飛ばしているのか,かなり直接的に感じ取れるのですが(それだけに書かないでおかないと,と思うことも聞こえてしまうのですが。),今回は都合で足を運べませんでした。そこで,ファイナル・スコアから思うことなどを書いておこう,と思います。


 1トライ差,そして1点差という僅差を勝ち抜く形のゲームもありましたが,Aシード初戦となった試合ですと,Aシードが相手をノートライに抑え込む,あるいは大量得点での勝利となったケースが多く,対戦相手となったチームにとっては,シードの壁を実感する,そんな試合になってしまったかな,と思うのです。たとえば,ノートライに抑え込まれたチームにとっては,なかなか相手の守備応対を突き崩せず,自分たちの攻撃の形に持ち込めなかった,という思いが残るでしょうし,大量得点差を付けられたチームにしてみれば,なかなか相手の攻撃を止めることができなかった,という思いが残っているかな,と思います。


 では,Aシードとの差がどのような部分にあるのか,と考えると,やはりディテールにあるのかな,と思うのですね。ディテールの差が,リズムを引き寄せるという部分で大きな意味を持つように思うわけです。たとえば守備応対ならば,鋭く低く,ボールキャリアに対してアプローチを仕掛けることができるかどうか。そして,その鋭さを持続できるかどうか。相手のリズムを奪い,自分たちのリズムへと持ち込むためには,どうしてもボール・コントロールを奪わないといけないのですが,なかなかボール・コントロールを奪う,という部分でノンシードはシードの後塵を拝してしまうケースが多いように感じます(もちろん,近鉄花園での本戦も例外ではありませんが。)。基礎技術での僅差,と見ることもできるでしょうし,メンタルでの僅差,と見ることもできるかも知れません。ノンシードが,チャレンジャーとして吹っ切れた状態でフィールドに立つ,と言うよりも,シードという存在を必要以上に大きく意識し過ぎてしまって,心理的に吹っ切れるまでに多くの時間を費やしてしまう(その間に,試合を決定付けられてしまう)形が多いように感じられるわけです。


 2回戦まで通用したアプローチが,Aシードを相手にすると通用しなくなる。


 大きな壁,と感じたかも知れませんが,チームにとっては「足らざるもの」を明確にする大きなきっかけになったのではないかな,と思います。守備応対面で,ハイレベルな勝負を挑むためには何が必要なのか,基礎技術面でどの部分をブラッシュ・アップすべきか。攻撃面で,自分たちの形に持ち込むためには,その前段階として何が必要なのか。実戦の中で明確に見えてきたものがあるかな,と思うのですね。このアプローチを,恐らく慶應志木であったり浦和は繰り返してきたはずです。正智深谷深谷,かつてのAシードで言えば進修館であったり熊谷工にあって,自分たちに足りない部分は何なのか,強く意識していたはずですし,逆に自分たちのやり方で通用した部分も感じ取っていたはずです。


 「負けたこと」よりも,その敗戦からチームを成長させるヒントをつかんで,そのヒントをチーム・ビルディングに活かしてほしい,と思うわけです。