ウェンブリーで勝ち取った銀メダル。

銀メダルに,「勝ち取った」という表現は違うのかも知れませんが。


 個人的には,「勝ち取った」という表現が最も相応しいように思うのです。


 ウェンブリーで戦われた,アメリカとの決勝戦であります。


 昨年のワールドカップ,その決勝戦も同じ対戦相手でした。そのときの印象とウェンブリーでの印象を重ね合わせてみると,真正面から頂点への勝負を挑める,そんな状態へとチームを進化させてきたのだな,と感じます。


 当然,先制点を奪われた局面は,なでしこが持ち込まれてはいけない形,その典型例とも言えるような形でした。アウトサイド(なでしこから見れば,SBの裏とCBの脇に生じるスペース)をしっかりと攻略,きれいなトラバースをセンターへと送る。守備ブロックが,トラバースのボールと飛び込んでくる相手,その双方に対する意識を払わなくてはいけない状態に持ち込まれたわけですから,相手はなでしこの戦い方を徹底的に意識し,どういう形に持ち込むべきか,明確なイメージを持っていたはずです。そのイメージが,見事にピッチに表現されてしまったのが,あの局面だったように思うのです。


 ではありますが,そもそもこのリスクを理解して攻撃的な姿勢を取った,と言うべきなのかな,とも感じています。


 「負けないこと」を軸に戦い方を構築するのであれば,恐らくアメリカに攻略されたスペースは潰しに行くはずです。けれど,このスペースを潰すことは,なでしこが持っている強み,パス・ワークに大きなネガティブをもたらすのも確かだろう,と思うのです。チーム全体が上下動を徹底的に繰り返せるのであれば話は違うけれど,チームがどのエリアでコンパクトさを維持するか,というコンセプトを崩してしまえば,結果的に相手の戦い方に引きずり込まれることにもなります。ならば,どんな相手であろうと,らしいフットボールを表現するためのエリア,コンパクトネスを突き詰め,らしい攻撃を仕掛けていく。


 実際,らしい攻撃を仕掛けている時間帯も感じられましたし,この試合では残念ながら,ちょっとした「偶然」(幸運,と言うべきかも知れませんが)が巡ってこなかっただけ,という感じもします。それだけ,真正面から勝負を挑んで,その結果として獲得した銀メダルではないかな,と思うわけなのです。


 さてさて。ちょっとトーナメントを俯瞰的に振り返ってみるに。


 精緻な印象が強まってくる,という感じはそれほど強くありませんでした。むしろ,ディテールでの微妙なズレはトーナメントを通じて,なかなか修正しきれなかったような印象を持っています。それでも,「ひとつひとつの軸」が強さを増してきたのかな,と感じます。チーム全体としてみるならば,鋭利かも知れないけれど,反面で脆さもどこかに感じさせる刃,ではなくて,しなやかさと強さを感じさせる刃へと変化してきた,と言いますか。


 この,しなやかさと強さを感じさせるチーム,という枠組みはずっと維持していってほしいな,と思います。