ピカデリー駅に憧れながら。
ユーストンからピカデリー駅へ。
ちょっとした憧れ,でしたね。
この憧れのもととなったのは,拓海さんが書かれていたエッセイです。
イングランドの競技場にフーリガニズムが吹き荒れる前の話,まだまだ各競技場に代名詞となる立ち見席,テラスが設置されていた時代の話を素敵な筆致で書かれていたのですが,そんな時代にロンドンに駐在されていた拓海さんが,ストレットフォード・エンド(オールド・トラフォードを代表していた,テラスと呼ばれる立ち見席)へと向かう道筋として紹介されていたのが,ユーストンからピカデリー駅,ということだったのです。ウェスト・エンドの小さなスタジオ・フラットに住んでいた私としては,同じ道筋をたどってオールド・トラフォードへと行けるといいな,なんて思ったのも確かです。
けれど,現実というのはそう甘いものでもありません。
もちろん,いまもそんなに変わりはないのですが,当時も相当におサイフは軽くて,しかもポンドはいまとは比較にならないほどに高かった。プレタ・マンジェあたりでBLTにコーク,ちょっとゼータクをしてクリスプをセットすると,それだけで見事に5ポンド(当時のレートで換算してみると,1000円)を超えるわけです。となれば,週末にチケットを握りしめてユーストン駅からピカデリー駅,というのは結局,憧れのままであったわけです。
ユナイテッドにとっての“Theatre of Dreams”は,長く遠ざかってきたメダルへの挑戦,という夢へと近付くための舞台でもあります。であるならば,いままでとはちょっと違う憧れ,というか,羨ましさがピカデリー駅,という言葉には加わるように思えるのです。