カーディフのことなど。

恐らく,祝祭感は当時と同じなのかな,と思うのですが。


 それ以上に,当時は臨戦態勢という印象が強かったですね。


 なでしこさんがグループリーグ最終戦を戦い,そしてセカンド・ラウンド初戦を戦うミレニアム・スタジアムがある,カーディフの話をちょっと徒然に書いていこうかな,と思います。


 話は,1999年のことです。


 1年強のUK滞在,その最後にRWC観戦(つまりは,ウェールズと日本の試合なのであります。)と同時にウェールズをちょっと小さめのクルマで回ってみよう,と思い立ち,住んでいたフラットから程近くのロンドン・パディントン駅からインターシティカーディフ・セントラル駅へと向かったのです。UKからの撤収絡み,ですからスーツケースはいささか重くて,B&Bまでスーツケースを引っ張っていく,その勇気はさすがにありませんでした。そこで,タクシーを利用させてもらうことにしたのです。


 カーディフはロンドンとは違って,それほど“ブラック・キャブ”の存在感が強くはありませんでした。確か,そのときに乗せてもらったのはヴォクスホール・ヴェクトラだったと記憶しています。その運転手氏,私を助手席へと案内するなり,「アルゼンチンにはお互い,注意しようぜ!」と。


 一瞬,何のことか考えて,すぐに意図するところを理解しました。


 ウェールズと日本は同じプールに入っているのですが,アルゼンチンも同じプールなのです。アソシエーションなフットボールでは存在感が強いチームですが,ラグビーフットボールでもなかなかの存在感を示していました,当時でも。でも,いささかラフなプレー・スタイルが目立っていたのも確かです。そのラフさを運転手氏は開口一番指摘してきたわけです。その後は,やはり「敵情視察」な会話もありましたね。勝ち点3は譲らないよ,という雰囲気を見せながら,でもいい試合を見たいものだね,なんて。アソシエーション・フットボールよりも,ラグビーフットボールに対して,強く思い入れを持つ土地柄であることが,この会話からも感じ取れたのです。


 予約していたB&Bに重いスーツケースを預け,今度は徒歩でカーディフ・セントラル駅方向へと戻り,レンタカーの調達,であります。最初はAVISを考えていたのですが,あとあとクルマを返すのに便利かも,ということで中央駅近くにあったハーツで,ヨーロッパ・フォードのボトムレンジ,“フィエスタ”を借りることにしたのでした。もちろん,おサイフが軽いから,という実質的な理由もあるけれど,結果的には大成功な選択でした。ブレコン・ビーコンズ国立公園からイングランドとの境界近くまで行ってみたのですが,何ともスポーツできるライドで,すごく楽しめたな,というのがいまでも記憶に残っています。


 それはともかく。フットボールというよりもラグビー,という話であります。


 国際映像を見たひとならば,何となく感じてもらえたのではないでしょうか。


 ピッチサイズの話であります。たとえば中野田は,アソシエーション・フットボールに最適化したピッチサイズです。天然芝も,フットボールでの使用を想定して張り込まれていますから,ゴール裏のエリアは(恐らく,ですが)ウレタン舗装になっています。対して,ミレニアム・スタジアムラグビーフットボールを基準としてピッチサイズが考えられています。たとえば七北田公園や三ツ沢,敷島公園(サカラグ)のように,しっかりと,ゴールエリアにも天然芝が敷き詰められているのです。


 オールド・ウェンブリーが全面的な改修を受け,現代的な競技場へと生まれ変わるまでの間,FAカップをホストしていた競技場でもありますから,必ずしもアソシエーション・フットボールに対して冷淡な競技場,というわけではありません。けれど,ミレニアム・スタジアムが何をきっかけに生まれたのか,そしてミレニアム・スタジアムの前身であるアームズ・パークを含め,川沿いに建つ競技場がどう位置付けられてきたのか,を見ると,ウェールズの土地柄が見えてくるかな,と思いますし,ウェールズがワールドカップであったり欧州選手権でなかなか存在感を強めることができずにきた(つまりは,ライアン・ギグスがなかなか国際舞台に立てなかった,という言い方にもなるわけですが。),その理由の一端が見えてくるようにも思うのです。