対磐田戦(12−19)。

チームの強みを削らずに,バランスを再調整する。


 と言っても,守備応対から逆算するような戦い方へとギアチェンジする,という意味では当然ありません。トランジション前後の局面だけを取り出せば,確かにカウンター・アタックの要素が強く感じられるフットボールと表現できますが,ボール・コントロールをどのエリアで奪うか,攻撃を仕掛けはじめるのか,という側面から今季の浦和を見れば,決して守備応対から構築された戦術ではありません。であるならば,厳しい気候条件に対応するためのアプローチとして,単純に守備面重視,という結論にはなりません。


 相手に対して「視界を奪う」ような守備応対から,攻撃へと切り替える。攻撃を仕掛けるにしても,相手守備ブロックが隙を見せるタイミングを冷静に狙い,無理に攻撃リズムを強めるようなことはしない。軸足の位置を大事にしながら,この時期にしっかりと戦術的な要素を再調整できているのではないかな,と思います。磐田戦であります。


 さて。まずは守備応対面から見ていこう,と思います。


 前半に関して見れば,相手が狙う攻撃をほぼプラン通りに抑え込めていたのではないでしょうか。たとえば,相手がサイドから攻撃を組み立てよう,という局面で,その攻撃を効果的に減速させることができていたように思うのです。相手の中盤,特に攻撃的な中盤がSBとの距離感を適切に保てていなかった,と言いますか,ダブル・アウトサイド的にサイドでの数的優位を狙う形がなかなか見えなかった,という要素も作用しているように思うのですが,サイドでの主導権を掌握できていました。攻撃リズムを変えるきっかけを失っているから,どうしても相手はパス交換でのリズムを構築できないし,中央にパスを繰り出すとしても,サイドで視界を絞り込まれているから自分たちの形でパスを交換できない。しっかりとオーガナイズされた守備応対を繰り返せていたように感じます。


 続いて攻撃面であります。


 今節に関して見るならば,比較的右サイドに攻撃の起点をつくる局面が多かったかな,と見ています。左サイドが,守備応対面での主導権で先手を取ったとするならば,攻撃面での主導権を掌握していたのが右サイドだったかな,と感じるわけです。けれど,ロングレンジ・パスの精度についてはもうちょっと詰めるべき部分があるかな,とも感じています。パスを繰り出すタイミングを取り出してみると,相手からプレッシャーを掛けられていて精度を失う,という局面はそれほど多くはなかった,と感じています。攻撃リズムに大きなアクセントを付けることができるか,それともボール・コントロールを相手に譲り渡してしまうのか(高い位置を取れているのが,そのエリアを失うことになる),という部分で大きな違いを見せてしまう部分でもありますから,レンジ・コントロールでもうワンステップ詰めていってほしい,と感じるところです。


 もうひとつ,ボール・タッチを意図して「していない」局面が作り出せているのが印象に残っています。戦術的なイメージが,攻撃ユニットでしっかりと共有できていることと,恐らくボール・タッチをしないことについての「確信」ができつつあるのかな,と思うのです。組織として,スペースをどのようにして使っていくかというイメージも煮詰まってきているように感じますし,スペースを「使わせる」ためのアクションが確信を持って取れるようになっている。当然,誰かがさらに奥,と言いますか,深いエリアからスペースへと走り込み,フィニッシュを狙える,という意識(であり確信)を持っていなければ,なかなかボールに触らない,という形はできないかな,と思うのですが,その形が見えてきています。


 指揮官も指摘するように,まだ改善すべき部分,あるいはさらにしっかりと煮詰めるべき部分は残っているし,課題となる要素もある。それでも,「勝ち点3」という足掛かりをしっかりと積み上げ,チームをポジティブな循環に乗せることができている。このリズムを断ち切ることなく続けていければ,見るべきものが見えてくるように思うのです。