対スペイン戦(グループD第1戦)。

ブックメーカも,読み切れなかった「勝ち点3」奪取。


 「マイアミの奇跡」に続く,「グラスゴーの奇跡」との表現もスポーツ・メディアさんを中心に見られますが,必ずしも奇跡という表現は適当ではないかも,と思う部分があります。もちろん,グループリーグ初戦に対戦できたこと,など,条件面での偶然も作用しているかな,とは思いますが,その偶然を生かすも殺すも準備次第であるのも確かです。


 準備,あるいは論理と言い換えることもできるかな,と思いますが,論理という基盤がなければ偶然,あるいは幸運を自分たちへと引き寄せることはできないはずです。であれば,「奇跡」という言葉は使わないでおこう,と思うところです。スペイン戦であります。


 さて。まず反対側から試合を振り返ってみようと思います。


 100%の状態に持っていかずとも「勝ち点3」を奪える,と計算していたかも知れません。ゴールド・メダルへの勝負権を持つ最右翼,という評価をされているチームですし,その自負もあるでしょう。ならば,決勝戦から逆算してのコンディショニングを意識していたとしても不思議はありません。また,持っている能力が低かろうはずもないことは,立ち上がりの時間帯でも垣間見ることができたように思います。


 しかしながら,リズムを奪われる形に陥ります。


 ボールを落ち着かせ,攻撃リズムを組み立てる,そのごく初期段階で厳しいプレッシャーを受けたことで,なかなか自分たちのフットボールに持ち込めなくなってしまったわけです。ボールをコントロールしているとしても,そのボールを縦に打ち込む,そのタイミングを狙われているから,なかなか攻撃リズムを変化させることができない。逆に,ボール・コントロールを奪われて追い掛ける守備応対に持ち込まれてしまって,その守備応対が心理面に悪影響を及ぼす。結果,前半段階で数的不利に追い込まれることになるわけです。


 では,視点を戻して。


 予選を振り返ってみると,このチームを「単調」と表現することが多かったかな,と思います。ボールを奪ってからのリズムに大きな変化が見られなかったから,です。その説明が,この試合になるのかな,とちょっと思ったりします。


 フットボール・ネイションズを相手にしたときに,自分たちのリズムでボールを動かして相手守備ブロックに隙を,という形はなかなかつくりづらい。と言いますか,真正面から勝負を挑めば相手の形に持ち込まれてしまう可能性が高いかも知れません。それでは,守備応対からチームを組み立てるか,となると,それも手法による,と思うのです。相手に対して強くプレッシャーを掛けるエリア,そのセットを誤ってしまえば,何とか相手の攻撃を抑え込めるとしても,その時間帯がどこまで続くか,という状態に持ち込まれかねないし,反撃を仕掛けるにしても,長距離のフリーランを仕掛ける必要性が出てきます。


 ならば,縦への鋭さを武器とできるエリアで守備応対を仕掛ける,という共通意識を落とし込む,と。攻撃ユニットが,積極的にボール奪取を狙ったファースト・ディフェンスを仕掛け,相手守備ブロック(この試合ですと,セントラル・ミッドフィールドとCBでつくられるボックス,という感じでしょうか。)に強いプレッシャーを掛け与え続ける。高い機動性,と言いますか,高負荷を前提にしたゲーム・プランだったように思うのです。そして,このゲーム・プランはスコットランドという地理的な条件があったからこそ押し切れたものだ,とも感じています。


 ともかく。理想的な形でグループリーグ初戦を乗り切りました。この初戦を本格的なアドバンテージとするためにも,第2戦が重要です。スペインに対するスカウティング,このスカウティングと同じ,あるいはそれ以上に緻密なスカウティングとゲーム・プランが大事な要素になっていくように思うのです。UKの環境は,確かに「高い機動性」を維持できる条件になっている。このチャンスを存分に生かすためにも,しっかりとした準備を繰り返していってほしい,と思いますし,UKメディアにサプライズを提供し続けてほしい,と思っています。