YARTはYRT!?(WEC第3戦・鈴鹿8耐)

エントリー・リストにクレジットされているのは,確かに“YART”です。


 2001シーズンからFIM世界耐久選手権を戦う,グラーツの程近くにファクトリーを構えているレース屋であります。この段階で,チェックが止まってしまったのですね。R1を鈴鹿へと持ち込むチーム,彼らを紹介するヤマハさんの特設ページを眺めてみると,ちょっと違った結論が見えてくるのです。


 引き続きフットボールを離れまして,鈴鹿8耐関連の話をちょっとだけ書いていこう,と思います。



 さて。端的に書いてしまえば,鈴鹿限定で“YART”(ヤマハオーストリア・レーシング・チーム)を限りなく“YRT(ヤマハ・レーシング・チーム,つまりは,ファクトリー・チーム)”へと近付けた,と理解してもいいようなチーム体制です。鈴鹿に持ち込まれるR1,その外観を見る限りはオリジナルのYARTのマシンと同じ印象ですが(今回お借りしたオフィシャル・フォトは,YARTのものです。),ライダーはFIM世界耐久選手権を戦うライダー・コンビ,ではなくて,BSB(ブリティッシュスーパーバイク選手権)を戦っているライダー・コンビに中須賀選手,というコンビネーションへと大きく変更を受けています。


 このラインアップ,なかなかに強力であります。


 芳賀選手は長くWSBを主戦場としてきたライダーで,ドゥカティ・ワークスで戦っていたこともある経験豊かなライダーです。鈴鹿8耐で言うならば,コリン・エドワーズ選手とのコンビでポディウム中央を奪った経験もある,ヤマハのエースと言って差し支えない選手です。そして,BSBのシーズン・タイトルを奪ったことがあるトミー・ヒル選手もまた,ヤマハのエースと表現していいライダーでしょう。鈴鹿8耐が,「耐久」とは言いながら実際にはスプリント的な色彩が非常に強いレースであることを踏まえて,「速さ」と「強さ」を合わせ持っているラインアップへと組み替え,ポディウム中央を狙いに来た,と理解すべきかな,と思うのです。


 振り返ってみるに,ヤマハは「やられたらやり返す」という姿勢を前面にして戦っている,という印象がそれほど強くないメーカです。でも,参戦体制も控えめなのか,となると印象は大きく異なります。参戦体制だけを比較するならば,当時のホンダ・ファクトリーと同等,あるいはそれ以上に強力な参戦体制を組んでいた時期が長いのです。そんな体制が戻ってきたような,YART(とは言うけれど,実質的にはヤマハ・ファクトリーが動かしているチームのような。)の体制であるように思うのです。