WEC第3戦。

6月の土曜日,のお話ではありません。


 6月の土曜日は,スポーツ・プロトタイプで戦われるレースで,その時間は24時間です。こちらの第3戦は7月最終週の週末,鈴鹿で戦われるレースであります。となれば持ち込まれるレーシング・マシンはスポーツ・プロトタイプではなくてWSB規定のレーシング・バイク,というわけですね。


 例年扱っておりますが今年もまた,の鈴鹿8耐のお話であります。


 かつての鈴鹿8耐は,FIM世界耐久選手権の1ラウンド,というよりは,ファクトリーがその威信をかけて真正面からぶつかり合う,そんなレースでした。当時のホンダ,その参戦体制を思い出してみると,オペレーションを担当するのはHRCで,プリンシパル・パートナーにしても鈴鹿だけのために大きなスポンサーを付けていました。ライディングを担当するタレントも,当時のトップ・カテゴリである500ccクラスを戦うライダーを招聘するなど,どこから見ても「勝ちに行く」体制を整えていたわけです。もちろん,そんな時期のレースも魅力的ではあったのですが,現在の,WECを転戦するチームを含めて勝負権を持ったチームが複数存在する,そんな姿も悪くない,と思っているのです。


 では,どんな体制になっているか,ちょっと眺めてみますと。


 まずホンダは,鈴鹿8耐を意識した体制を組んでいるかな,と感じます。WECを戦うチームもクレジットされてはいますが,実際に勝負権を持つチームは,と見ると,やはりHARC−PROさんやTSRさんの存在感が強いように思うのです。そんな視点で見ると,スズキもSERCチームの存在感は決して軽視できないように思うのですが,それ以上にヨシムラの存在感が強いように思うのです。対して,ヤマハカワサキの体制を眺めてみると,あくまでWECを戦うチームを中心にしながら鈴鹿8耐を考えていることがうかがえます。


 世界的に見ても難易度が高いコースを,スプリントのようなペースで8時間戦い抜くことが求められるわけですから,やはり鈴鹿の経験値は無視できる要素ではありません。その意味で,ホンダやスズキのアプローチは勝負権を持つためにはごく当然,ではありましょう。と同時に,昨季のBMWのようなサプライズを,今季も見せてほしい,という思いがあります。


 ファクトリーの持つ華やかさは薄れたかも知れないけれど,真剣勝負の持っている面白さは決して薄れてはいないし,むしろ濃くなっている要素もあったりする。相変わらず,楽しみな7月最終週であります。