ユニオンジャックのライアン。

国際舞台に,縁が薄い。


 ラグビーフットボールでは,RWCに代表される国際舞台でも勝負権を持つ,そんなチームを擁しているのに,アソシエーション・フットボールではなかなか国際舞台で存在感を示すことができない。外野,特にイングリッシュな外野は“レッド・ドラゴン”ではなくて,“スリー・ライオンズ”であったならば,1966年のワールドカップ以来遠ざかっている頂点にもっと早い段階で再びたどり着いたのではないか,などの仮定論を持っているとかいないとか。


 しかしながら本人は,「ウェールズ代表」であることにこだわりを持ち続けていたとのことですが,やはり国際舞台への渇望感,というのはあったのかも知れません。今回は,「UK代表」のライアン・ギグス選手についてちょっと書いていこう,と思います。


 クラブ・レベルでは数多くのタイトルを奪取しながら,なかなか国際舞台での縁がなかった。


 ふと,ジョージ・ベストと重なる部分を感じたりします。もちろん,パーソナリティに重なる部分が,というわけではありません(ユナイテッドに長く在籍している,という意味では確かに重なってはいますが)。国際舞台との縁,という意味であります。同時期にマンチェスター・ユナイテッドに在籍していたボビー・チャールトンやデニス・ローはワールドカップで活躍していますが,ベストだけは国際舞台との縁が薄かったのです。イングランド代表でもなくスコットランド代表でもなく,北アイルランド代表であった,という部分が影響しているわけです。


 外野,特にUKに住んでいるわけではない外野はどうしても,より活躍できる可能性がある代表チームになぜ,と思いがちですが,UKのひとたちにとってはイングランド,あるいはスコットランドであったりウェールズであったり,というアイデンティティに徹底してこだわる部分があるわけです。ブリティッシュ,という意識も確かにあると思うけれど,同時にイングリッシュであったりスコティッシュ,あるいはウェルシュという意識が非常に強い。そんな意識が影響しているように思うのです。UK代表チームを組むにあたって,スコットランド北アイルランドの協力が得られなかった,というのも,このアイデンティティとの関わりがあるわけです。ギグス選手にしても両親がウェルシュであること,出身地がカーディフであることなど,ウェールズにこだわるのは当然,と思えるのです。と同時に,国際舞台に立てずにきた,という部分もどこかでギグス選手に燻っていたようです。読売新聞の朝刊(7月22日付)に,畔川さんが書かれたコラムが掲載されていますが,そのなかでディビッド・ベッカムなど,ユナイテッドに在籍する選手が国際舞台で活躍することが羨ましかった,というコメントが紹介されています。


 予備登録から本登録になる,その段階では,ベッカムがスコッドから外れる,ということでメディアが取り上げていたように思いますが,個人的にはやはり,ギグス選手に国際舞台を,という思いがより強かったところがあります。ブラジルとのインターナショナル・フレンドリーを見る限り,本戦にどこまで合わせていけるか,という部分でちょっとばかり不安要素もあるかな,とは思いますが,できるだけ長くギグスがピッチに立っているところを見てみたいと思っています。