ミッドシーズンの人事往来によせて。

めぐりあわせとは,どんなフットボーラーにも当てはまる言葉かな,と思います。


 もちろん,ポジティブな意味でのめぐり合わせもあるでしょう。


 それまで不遇を託っていたフットボーラー,あるいは戦術的なミスマッチによって精彩を欠いたまま,あるいは錆び付きかけていたフットボーラーが,持てるパフォーマンスを引き出せる環境を得たことで輝きを取り戻す,ということも当然にあります。物事には表と裏がある,ということをこのことに当てはめるのであれば,この正反対の話も当然にあり得ること,だと思うのです。


 であるならば,誰にとってもあり得る話ではあるわけです。


 ちょっとばかり時期に遅れてしまいましたが,今回は浦和からのリリースをもとに,思うところをちょっとだけ。


 ちょっと,振り返ってみるに。


 2010シーズンを思えば,“アタック&カバー”のパッケージを採用していました。守備ブロックとして低めに構えて相手を抑え込む,というよりは,積極的にボールに対してアプローチを仕掛ける役割と,そのカバーリングに入る役割を分担するような形で守備ブロックを構築していたはずです。


 そのどちらの役割だったか。持っている強みを思えば“カバー”であったのは当然でしょう。


 ライン・コントロール,という部分から見るならば,必ずしもラインを丁寧に上下動させるタイプではなかったかな,という印象です。むしろ,低めにエリアに構える傾向が強かったような印象が残っています。戦術的な約束事,という枠組みのなかで個を活かす,という意味では,持っている強みよりも,戦術的な理解度で不安を残す,という評価になりかねない側面を,確かに持っているようには感じられました。恐らく,今季チームを預かる指揮官はそんな判断をしていたのだろう,と思います。反面で,「個」の持っている強さ,たとえばスライディング・タックルの鋭さであったり深さは,かつて浦和に在籍してきた外国籍のフットボーラーとどこか共通する要素を感じさせるものがありました。2011シーズン,2010シーズンまでの枠組みとは大きく違う,個を大きな要素とするフットボールは最後まで浸透しなかった(個人的には,持ち込もうとした戦術と,浦和の戦力との間に決定的なミスマッチがあったと思っています。)けれど,あの厳しいシーズンを戦ってくれた,大事なフットボーラーであることも確かです。


 オーストラリア代表,その代表キャップを12持っているフットボーラーが,出場機会を得られずにシーズンを過ごしている,というのは不自然な話です。試合に出られる環境を得られるのであれば,その話を大事にしてほしい,という思いもどこかにありました。個人的には,中東という選択肢はちょっと意外でもあったのですが,ぜひスターターのポジションを奪い取ってほしい,と思います。