対鳥栖戦(12−17)。

狙い通りの要素と,想定外な事態と。


 およそ,正反対の要素が不思議と同居してしまった試合ではなかったかな,と思います。「勝ち点3」を引き寄せるに十分な得点差,と思われた得点差が,いつしか最小得点差にまで縮められたのですから,チームが大きな混乱状態に陥ったのは間違いないだろう,とは思いますが,そこからチームのバランスを取り直すことができた,というのがこの試合における鍵,そのひとつではあったか,と思うところです。


 相変わらず遅筆堂状態が変わらない,鳥栖戦であります。


 さて,試合を振り返ってみますに,後半のオープンすぎる展開(実際の時間帯は,それほどに長いものではなかったのですが,試合全体の印象を大きく左右しかねない,そんな時間帯であったのも確かかな,と。)は予測できなかった,というのが正直なところです。それだけ,前半は相手が描こうとするフットボールを効果的に抑え込み,自分たちのフットボールへと相手を引っ張り込むことができていたように感じます。


 恐らく,対戦相手に対応する形でポジショニング・バランスやファースト・ディフェンスの微調整をかけてきたのかな,と見ています。相手を深めのエリアで抑え込むのではなく,ちょっと高めのエリアからしっかりとボール・コントロールを奪うことを意識して相手に守備応対を仕掛けること,ボール・コントロールを失ったルーズな局面でボール・コントロールを引き寄せるためのアクションを相手よりも速く仕掛けることを狙ったポジショニング・バランスを意識付けてきたように感じるわけです。また,先制点を奪ってからの時間帯もリズムが緩くなることはなく,ゲームをしっかりとコントロールした状態で試合を折り返します。少なくとも前半終了段階までは,狙い通りに試合を動かせていた,と感じます。


 対して,後半であります。


 後半立ち上がりの時間帯に追加点を奪い,ここから短時間で得点差を広げることができたのは,前半のコントロールがしっかりと後半にも引き継がれているな,と感じさせるものがありましたし,急速に悪化してしまったコンディション,たとえば視界を奪ってしまう豪雨(スタンド・レベルでも反対側のゴールが霞む状態でしたから,ピッチレベルでの視界悪化はプレーに相当な影響を与えただろうと感じます。)であったり,その豪雨を吸収しきれずに水が浮いてしまったピッチを巧みに利用してきた,という部分も含めて,「勝ち点3」奪取に大きく近付いたと感じさせる時間帯だったわけです。


 しかしながら,ここからの時間帯が大きな問題でした。


 無意識的に,であるとしても自分たちからスローダウンしてしまった,というチーム全体としての心理的な要素も大きな要因だと思います。加えて,ビルドアップ段階の問題があったように思うのです。攻撃を組み立てるエリアと豪雨の影響で水が浮いている(つまりは,ボールがストップしてしまう)エリアとが見事に重なり合ってしまったように感じるわけです。後半,センターサークル付近からメインスタンド側のタッチライン付近のエリアには水が浮いてしまって,パス交換をしようにもボールに予想外のブレーキが掛かってしまって,ボール・コントロールを失いかねない状態に陥っていました。このピッチ状態を対戦相手は巧みに突いてきた,という印象があるのです。相手はセンターサークル付近のエリアをボール奪取の起点として位置付け,比較的豪雨の影響を受けていなかった(ように少なくともアウトサイドからは感じられた)左サイド,浦和から見れば右サイドへとボールを展開してきた。この相手の攻撃に対して,完全に後手を踏んでしまい,その後手を精算できずに混乱を来したまま得点差を最小の状態にまで戻されてしまったのです。


 短い時間帯に,リズムを奪われる。


 指揮官が指摘するように,4−0の段階までは試合をコントロールすることができていながら,この直後の時間帯,ある側面においてはチーム全体の心理的な要素,ある側面においては自分たちが最初に利用できたコンディションを相手に使われた,という要素によって,必要以上に試合を難しくしてしまったのは大きな課題だと思いますが,反面で追加点奪取という部分であったり,相手が仕掛けてくる,その姿勢を巧みに突きながらカウンターを仕掛けていく,という部分においては狙うフットボールが表現される時間帯が着実に増えてきている,煮詰めるべき要素が煮詰まりつつある,という印象を持ったのも確かです。


 いずれにしても。シーズン折り返しの段階で積み上げてきた勝ち点,その数字を見る限り,かなり安定して勝ち点を積み上げてきているのではないかな,と思います。「勝ち点3」を取り損ねている,という印象を残す試合も確かにありますが,視点を変えるならば「勝ち点0」に終わった試合が比較的少ない,とも言えるように思います。この流れをまずは失わないこと,だと思いますし,まだまだ守備応対面にしても,攻撃面にしても煮詰めるべき要素,さらなる応用をしていくべき要素がある。どう,シーズン終盤にかけてチームが熟成を重ねていくのか,楽しみであります。