対仙台戦(12−15)。

攻撃面で相手の強みを潰すのではなく,守備面で潰しに行く。


 どちらが,ではなくて,どちらも同じ発想を持っていたのではないでしょうか。相手が狙うフットボールに嵌り込まないこと,を強く意識して,まずは相手が得意とする組み手に持ち込ませないこと,を徹底させていたのではないでしょうか。どこかでバランスを崩していかないと,ゴールを奪うことはできない,というのも確かなのだけれど,相手はその「バランスを崩す局面」を待ってもいたはずです。


 焦れてしまえば,相手の術中,狙う組み手に嵌り込むことになる。


 ちょっとばかり,柔道的な言葉を引っ張り出してみましたが,今節はどこか,「組み手争い」の緊張感に支配された部分があるような,そんな印象があります。ということで,相変わらずの遅筆堂ペースで申し訳ないです,の仙台戦であります。


 守備応対面,と言いますか,相手の強みを引き出させないための「組み手争い」という印象が強い試合であったのは確かですが,そんな試合で敢えて,攻撃面での印象を書いてみよう,と思います。


 ごく大ざっぱな言い方をすれば,攻撃オプションが増えつつあるかな,と感じます。


 たとえば,相手守備ブロックの背後を突く動きが見えてきています。今節,トップに入った原口選手は相手守備ブロックの背後を突く,そのタイミングを駆け引きの中で微調整していく,というには荒削り,と感じはしますが,裏を突く,という姿勢が見えているのはポジティブな方向性だな,と感じます。結果論で言うならば,違った結論も当然に導けるかも知れません(し,達也選手との戦術交代は,原口選手にとって何が必要なのか,という指揮官からのメッセージも込められているように見えます)が,自らのストロング・ポイントとは違う要素であるとしても,チャレンジを繰り返していかないことには,望む結論を導くことは難しい,とも感じます。足下にボールを要求するだけでなく,自らがポジションを縦に変化させながらボールを呼び込み,加速をしている状態でボールを受けることができるならば,フィニッシャーとしてのパフォーマンスは高まっていくはずです。その意味で,実戦負荷が掛かった状態でのチャレンジは,ネガティブな方向性だけで見るのではなくて,ポジティブにも見ておきたい,と思うところです。


 もうひとつ。ビルドアップの幅も広がってきているような印象を持っています。


 守備ブロックと阿部選手でボールを動かし,タイミングを狙ってサイドへとボールを繰り出し,そのボールを中央に戻していく,という形だけでなく,アタッキング・ミッドフィールドへと縦にボールを預けるタイミングを狙い,中央から逆サイドへとボールを動かしていくことで相手守備ブロックを引っ張り出していく,という形が表現される時間帯が出てきているように感じるわけです。そしてビルドアップ,そのバリエーションも見えてきています。阿部選手が下がって4バック的に,だけではなく,秀仁選手が下がる局面も見えてきているわけです。チーム・ビルディングの初期段階では,ボールの動かし方,であったり,ビルドアップのタイミングが相手からも読みやすい状態になっていたように感じますが,今節にあっては,その動かし方,ボール・コントロールを奪ってからのビルドアップに複数の選択肢が見え始めている。


 であれば,縦の循環が最終ライン方向,だけでなく,トップ方向に対しても機能していくことが求められていく,というのが次の段階かな,と思いますが,今節はまだまだ循環がスムーズとは言えませんでした。セントラル・ミッドフィールドが高いポジションを取れる時間帯が増えていくと,攻撃面での厚みを増すことができるように思うのですが,今節はなかなか中央での厚みは作り出すことが難しかった。トップでのボールの収まり,チームが高い位置を取るための時間が今節にあってはつくれていないから,実際には縦のエリアを奪いに行く,そんな局面がなかなかつくり出せていなかったように見えるのです。確かに攻撃面での形には幅が見えてきてはいるけれど,熟成段階から言うならばまだまだ初期段階,とも感じます。


 守備応対面だけで見るならば,恐らく狙うフットボールは相当程度にピッチに描き出すことができていたかな,と思います。数字で見るならば,恐らく相手がポゼッションしている時間帯が長い,というスタッツになるかな,と思いますが,「持たせている」時間帯でもあったように思います。相手が窮屈さを感じる,そんな視界をチームとしてつくれていた,と思うわけです。その意味で,狙い通りの部分とまだまだ煮詰まっていない部分が重なっていたのが今節であって,であるならば「勝ち点1」は不十分な数字であるとしてもアンフェアではない,そんな印象を持っています。