町田対草津戦(12−J2#18)。

足らざるもの,はある意味明確なのですけども。


 その足らざるもの,なかなか埋められていないな,と感じました。


 戦術的なフレームは,しっかりと機能しているように感じます。


 でも,「何のための」フレームなのか,がちょっと曖昧になっているのかな,と思います。相手を崩し,隙を突くためのフレームであって,そこから仕掛けていく必要がある,と思うのですが,仕掛けていく姿勢がなかなか見えてこない。


 大ざっぱに言ってしまえば,戦術的なイメージ,そのバランスが「ボールを動かす」という部分に傾き過ぎているように思うのです。相手を揺さぶり,隙を突いて縦へと仕掛けるためにボールを動かす,という印象が薄く感じるわけです。ゴールを狙う,縦に仕掛ける,という要素が小さくなってしまっているように感じられるから,ボールを動かす,という要素が消極的な部分につながってしまいがちになる。以前書いた言葉を引っ張り出せば,アタッキング・サードで「カッティヴェリア」(オレ自身を活かすために,チームを使うというような感覚)を強く感じられる局面が少ないな,と思うのです。しっかりと相手を崩してから,という意識かも知れませんが,結果として仕掛けるタイミングを失っているようにも映るのです。仕掛けていった結果としてミスをして,ボール・コントロールを奪われるか,それとも消極的にボールを動かしている中で相手にコースを消され,ボール・コントロールを奪われるのか。ボール・コントロールを失う,という意味においては同じでも,大きく違っているように思えるのです。


 金曜日に中野田に,ではなくて,土曜日に野津田に足を運んでみました,という話を(相変わらず遅筆堂ペースではありますが)書いていこう,と思います。


 まずは,ホームチームに敬意を表して町田の印象から。


 ボールを積極的に動かす中から相手の隙を狙って,というフットボールであることは,確かに受け取れるのです。でも,アタッキング・サードでの戦術的なイメージ,どういう意識で相手守備ブロックを揺さぶるのだろうか,というのがなかなか見えていなかった,というのも確かです。どうしても,結果が出ていないと守備応対面での不安定性,などという視点で見てしまいますが,町田に関してみるならば,攻撃面のリズム,あるいはバランスの悪さが,結果として守備応対面に悪影響を及ぼしているように思うのです。


 たとえば。


 トップにボールが収まったとして,そのトップからボールを引き出して縦に,という形は本当に少なかったように感じます。ボールを収めて,そのボールをサイドに展開する,まではいいのですが,そのサイドに展開したボールを斜めと組み合わせていく,というアイディアが欠けているようにも思うのです。サイドがボールを保持すると,どうも直線的に縦を突く形が多いように感じられました。このことを相手側から見れば,サイドの守備応対がやりやすい,ということに結び付くように思うのです。ボール・ホルダーを中盤とSBで挟み込み,数的優位を構築してしまえば,攻撃を寸断することができる,と。中央で縦を狙う姿勢がない,という部分とつながることでもあるかな,と思うのですが,「斜め」の選択肢があまりに薄いことで,相手守備ブロック,であったりサイドの守備応対を混乱させられていないように思うのです。縦へのチャレンジをしっかりと意識していかないといけないエリアで,ボールを縦に入れるタイミングが取り切れていないのかも知れませんが,ボールが横に動く時間帯が必要以上に積み重なってしまっているように感じられます。


 攻撃面で,なかなか縦に仕掛けていけないから,どうしてもサポートが必要になるわけですが,そうなるとチームが前掛かりになる,とも言えます。この局面でボール・コントロールを失うと,有効なファースト・ディフェンスが掛からないだけでなく,守備ブロックが抑え込むような守備応対を仕掛けることができなくて,追い掛けるような形に持ち込まれることにもなります。


 もっと,強引に仕掛ける局面が見えていい,相手守備ブロックを揺さぶりきれなくとも,仕掛けていけると感じたタイミングで縦に仕掛けていくのも一策かな,と思います。


 その意味で,ハーフタイムを挟んで,ディミッチ選手が入ってからの攻撃は(あくまで相対的に,ですが)「縦」を感じられるようにはなってきました。後手を精算できる可能性が感じられないゲームでもなかった,とも思います。であるならばなおのこと,後半立ち上がりから表現できた攻撃の形を,立ち上がりから表現していく必要があるはず,と思うわけです。


 対して,草津であります。


 リズムを掌握できていなくてはならないゲームなのに,相手にリズムを握られる時間帯がいささか長かった,というのは確かですが,反面で「勝ち点3」をしっかりと奪った,という部分は評価できるのではないかな,と思います。


 立ち上がりから,ゲーム・クロックが20:00を示そうかという時間帯あたりまでの戦い方は,ほぼ草津が描くプラン通り,だったのではないでしょうか。ボール奪取で主導権を掌握していたし,サイドでの守備応対についてもバランスを失うような局面はほとんど見られませんでした。CBやSB,セントラル・ミッドフィールドなどを含めて,しっかりとスカウティングの結果を約束事に落とし込んでいることが感じられる,そんな戦い方を表現できていたように思います。であれば,スコアを動かしたのはセットピースからでしたが,先制点を草津が奪った,というのはフェアな結果ではないかな,と思います。


 思いますが,ここからの時間帯,特に後半に課題があるかな,と思います。


 もちろん,守備バランスが決定的に崩れるような局面がなかったことで,相手に後手を精算されるようなことはなく,逆に追加点を奪取しているわけですから,結果ベースで見るならば決して悪い試合ではありません。けれど,結果ベース「だけ」で試合を見ていていいチームではないだろう,と思うところもあるのです。


 後半開始の段階で,相手は戦術交代を仕掛け攻撃リズムに大きな変化を付けてきました。その変化に対して,自分たちの戦い方を微調整していく,その微調整がなかなか機能しなかったように思うのです。スカウティングから大きく外れるフットボールを,後半の町田が表現しているか,と言えば,それは違うでしょう。恐らく,町田が表現してくるのは後半のようなフットボールであるはずです。前半段階で町田をしっかりと抑え込めている,という部分が必要以上に作用してしまったのかも知れませんが,ボール・ホルダーへのアプローチ,あるいはファースト・ディフェンスの強度が前半と比較してルーズになっている時間帯があったように思うのです。このルーズさを,どこまで潰せるか,がさらなる上を狙うにあたっての課題になるのかな,と見ています。


 さて。冒頭の話に戻りますが。


 フットボールは相手よりも多くのゴールを奪うことが求められます。内容面も大事なのだけれど,結果を出せないと,内容面も悪影響を受けてしまうことになる,そんな側面があるように思います。そして,ゴールを奪うためにはどこかで,「縦」を狙う姿勢が必要になります。その縦を狙う姿勢がなかなか見にくいのもまた,確かだな,と思います。狙うフットボールに対する確信を積み重ね,内容面への悪影響を避けるためには,悪循環をどこかでしっかりと断ち切らないといけない。そのためにも,攻撃陣(のみならず,チーム全体)がもっと「縦」への意識を強めること,局面によってはバランスを崩してでも縦を狙っていく姿勢が求められるのかな,と思います。