対FC東京戦(12−13A)。

5分,という時間感覚を短く感じた試合でした。


 後半,ゲーム・クロックが止まるタイミングにフォース・オフィシャルがLEDボードに表示させた数字は5。


 ともすれば,長さを感じる数字かも知れません。アクチュアル・タイムを強く意識している今季,決して不思議な数字ではなくなりつつあるのは確かですが,試合によっては長さを明確に感じる,そんな数字でもあります。しかしながら今節にあっては,5分プラスがいつの間にか経過していた,という印象がはるかに強く残っています。


 この時間帯に,試合をイーブンへと引き戻されているのは確かですし,ゲーム・マネージメントという部分でまだまだ詰めていかなくてはいけない部分がある,というのも確かでしょう。ゲーム・クロックが90:00を示そうか,という時間帯に得点を奪い,ここからの時間帯でどう試合をクローズしていくか,というタイミングで不用意に相手のフットボールに乗ってしまったという印象は確かに強いし,CKからの失点という形は,残念ながら今季なかなかクリアできていない課題,その形でもあります。


 とは言え,この局面が試合全体の印象を決定付ける要素だとは思いません。


 相手に試合をイーブンに引き戻されたあとにあっても,チームとして表現しなくてはならないこと,自分たちのフットボールという基盤は決して揺れることがなかったように感じます。


 恐らく,対戦相手にあっても同じことでしょう。浦和を,自分たちのフットボールへと引き込んでいくために何をすべきか,しっかりと意識付けされていたはずです。浦和にしても,相手をどう,自分たちのフットボールへと引きずり込むか,ゲーム・プランを組み立てた状態で飛田給へと乗り込んできたはずです。お互いの思惑,意識が真正面からぶつかり合い,その形がタイムアップまで決して崩れなかったことが,緊張感あふれる試合になった,その大きな要因だったように,思うのです。


 さて。いつも通りに1日遅れでありますが,のアウェイ・マッチなFC東京戦であります。


 いつものように,ごく大ざっぱに試合を2分割して考えてみますに。


 前半は,相手をしっかりと相手をコントロールした状態で自分たちのフットボールを表現できる,そんな時間帯がつくれていたように感じます。相手が,高いエリアから厳しくプレッシャーを掛け与えていく,と言うよりも,ちょっとだけチームのポジショニング・バランスに意識を傾けた戦い方をしていたためか,低いエリアからのビルドアップが安定していたかな,と思います。たとえば,守備ブロックがパス交換をするタイミングを,前半段階では相手は強く狙ってはこなかったように感じます。ただ,ビルドアップから攻撃リズムを引き上げていくためのパス,そのパスを繰り出すタイミングを相手は「狙って」いたようにも感じます。たとえば,縦に繰り出すパスに対するインターセプトであったり,ボールを大きくサイドに展開したあとの守備応対などに,浦和がどう攻撃を仕掛けてくるか,という部分でのスカウティング,そのスカウティングをもとにしたゲーム・プランが透けて見えてくるような印象でした。


 このことを浦和から見れば,一段階上がった「精度」が求められる段階にきている,と感じさせるものがあります。戦術的なイメージがプレッシャーを受けた状態でも重ね合わせられる,そのための精度,であります。


 縦に仕掛けていくパス,その強さであったり角度,サイドへと展開するパスであれば,そのパス・レンジであったり強さ。その「精度」がワンステップ上がったものであることが求められつつあるかな,と思うのです。今節,チームが思い描く攻撃の形は確かに受け取れました。けれど,相手が使いたいスペースを効果的に潰してきていたり,パスを繰り出す側に対してプレッシャーを掛けていたことで,そのイメージがなかなかカチッとかみ合う形になりきらなかったかな,とも見ています。このイメージをしっかりとピッチに表現するために,微調整すべき要素がパスを繰り出す側,そして受ける側双方にあるように思うのです。偶然もどこかに作用しているように思うフィニッシュ,そこまでの過程を徹底的に突き詰められれば,偶然をロジカルに呼び込めるところにまで行けるのではないか。それだけのポテンシャルを感じるだけに,中断期間で詰めていってほしい要素だな,と思います。


 対して後半は,高めのエリアから積極的に強いプレッシャーを掛け与えていく形へと戦い方を動かしてきたように感じます。この戦い方の変化に対して,なかなかスムーズな応対ができていなかったように感じます。そのために,後手を踏む時間帯が出てきてしまった。たとえば,守備ブロックで考えると,相手のトップであったりアタッキング・ミッドフィールドが掛け与えてくるプレッシャーに対して,なかなかそのプレッシャーを回避しながらボールを動かす,という局面が見えなくなる。どうしても,相手のプレッシャーを回避する,という部分に意識が傾くから,ボールを高いエリアへとつなぐ,と言うよりは,低いエリアからちょっとでもボールを離れさせたい,というボールの動かし方になってしまう。加えて,後半は前半と違って,ルーズボールをなかなかコントロールできない時間帯が増えてしまったようにも感じます。微妙な距離感の違いであったり,相手のプレッシャーがちょっと強めに掛かってきた,という要素が作用しているかな,と思うのですが,前半であれば,高めのエリアでボール・コントロールを奪い返して攻撃を循環させることのできた局面が,後半に入ると相手にコントロールされる局面が増えてきてしまう。


 と,振り返ってみるに。


 やはり,ギリギリのバランスにあった試合だな,と思います。相手にしても,決定的なフィニッシュがゴールポストにはね返された局面(このリフレクトにしても,偶然が作用すれば,があったかも知れないほどの脅威でした。)があったし,同じように浦和もフィニッシュがゴールマウスに嫌われた局面があった。相手の攻撃ユニットをしっかりとコントロールしながらも,同時に攻撃面ではしっかりと人数をかけて仕掛けていく。そんな形がつくれていたから,90分プラスを通じて,緊張感が継続した“Good Game”になったのかも知れない,と思うのです。


 ボールがゴールマウスに吸い込まれる,そんな偶然もフットボールならば,ボールがバーに嫌われる偶然もまたフットボールです。そして今節は,そんな偶然が双方に訪れた。「勝ち点3」を眼前で逃した,そんな印象も強いのですが,反面で「勝ち点1」という結果がフェアにも感じられる,そんなゲームであったように思うのです。