対清水戦(12−12)。

自分の形で,襟と袖を取り合って。


 ある種の理想かも知れません。知れませんが,この理想が描かれることはない,と言っても差し支えないように思います。「組み手争い」です。相手が得意とする組み手を取らせないようにしつつ,同時に自分の形へと持ち込んでいく。同じことかな,と思うわけです。


 いつも通りに1日遅れ,な清水戦であります。


 さて。マクラに柔道な話を持ってきましたが,柔道だけに限った話ではないだろう,と思っています。相手がある競技ならば,程度の差こそあれ,必ずついて回る要素だろう,と思うのです。そして,フットボールも相手がいなければ成り立たない競技です。


 相手がどのエリアに強みを持っているのか。その強みを効果的に抑え込むためには,どのような戦術イメージが必要か。自分たちのフットボールへと相手を引き込んでいくことも確かに重要ですし,自分たちのフットボールという枠組みがなければ,相手に合わせた戦術的な微調整も意味を持たないことになります。ただ同時に,相手のフットボールに対してあまりに無防備であれば,自分たちのフットボールが表現できない可能性もあるし,リーグ戦に求められる「勝ち点」,この勝ち点を積み上げられないリスクを背負うことにもなりかねない。


 新たなフットボールを導入しているシーズンですから,自分たちのフットボールを徹底的に意識して,というアプローチであったとしても,それほどの不思議はありません。が,「勝ち点」という足掛かりがなければ,新たなフットボールを徹底的に,というわけにはいかなくなってしまうのも確かです。勝ち点という足掛かりを引き出せないフットボール,という意識が芽生えてしまえば,チームから確信が奪われていくことにもなります。そんな状態に陥らないために,現実的な微調整が求められたり,セットピースが大きな鍵を握ることになる,わけです。今節は,「らしくない」と感じるフットボールから立ち上がっていったかも知れないけれど,実際には「らしさ」を持ち続けるため,このゲームだけに限定するのであれば,自分たちのフットボールへと相手を引き込んでいくためのリアルだったのではないかな,と思っています。


 ということで,微調整の根幹だったと思われる守備応対面から見ていきますと。


 今節,どのような微調整をかけてきたのか,明確にピッチから受け取れました。端的に書けば,サイドを徹底的に抑え込みにかかること,です。このことは,左サイド(相手からすれば,右サイド)でより明確だったかな,と思いますが,逆に言えば,右サイドの巧みさが今節は感じられたように思います。ごく大ざっぱに言うならば,平川選手のポジショニングです。高い位置を取っている時間帯も当然あるのですが,では守備応対時に低いだけか,と言うとそうでもありません。ポジショニングの巧みさによって,相手から主導権を奪っていたように感じるのです。そのためか,相手は立ち上がりの段階から右サイドにウェイトを傾けている時間帯が多かったように見ています。攻撃を組み立てるにあたり,CBからパスを繰り出すのは,ポジション取りを難しくされている左サイドではなくて,右サイドを選んでいる形がかなり多かったように感じるのです。


 そこで,左サイドです。


 確かに,相手のSBはかなり深いエリアにまで入ってくる局面がありましたが,この局面においてもマークの受け渡しが破綻してしまう,ということがありませんでした。基本的には,槙野選手と梅崎選手がサイドを抑え込むための基本ユニットだったか,と思うのですが,バックアップとしてこのエリアに入ってくるセントラル・ミッドフィールドであったりCB,局面によってはアタッキング・ミッドフィールドがポジションを下げながらカバーリングに入っていく,そのバランスが安定していた,と感じます。ここ数節,守備ブロックがどうスライドして数的なバランスを取るか,であったりが課題になっていたかな,と思うのですが,今節に関してはチームとして,守備バランスがしっかりと意識付けされていたかな,と感じます。


 反面で,まだゲーム・マネージメントという部分で課題があるのも確かかな,と思います。


 たとえば,相手をショートハンドな状態に追い込んでからの戦い方,です。相手にリズムを握られる形になる時間帯が,フルタイムを迎えようか,という時間帯に見えたのは課題だろう,と思います。なかなかボール奪取の形が作れなくて,守備応対にしても低いエリアでの守備応対になっている。あるいは,相手ボール・ホルダーを追い掛けるような形での守備応対を強いられる局面が出てきて,結果としてファウルからFKのチャンスを与えるような形になる。そのリズムから,なかなか抜け出すことができなかったというのはまだまだマネージメントという部分で修正,意識を再確認しておくべき要素がある,ということだろう,と思うわけです。


 リーグ戦のほぼ1/3である12節終了時点で,積み上げてきた勝ち点とスタンディングを眺めてみて。


 100%ポジティブに,というわけにはいかないかも知れないけれど,決してネガティブに見る必要はない数字かな,と思います。第7節から,ちょっとばかりリズムが悪くなっているかな,とか,早い段階で対戦相手が浦和対策を落とし込んできているな,という印象は強くなっていました。勝ち点を積み上げる,という意味で見直してみても,なかなか勝ち点3を積み上げるには至らなかった。それでも,根幹を揺るがすことなく,自分たちが現実的な微調整を施すことで相手の狙うフットボールに乗らないようにしつつ,自分たちのフットボールへと引き込むタイミングを狙う,という形に持っていくことができつつある。階段のステップを明確に一段上がった,と言いきるのは尚早かも,ですが,少なくとも上がろうとしていることは感じ取れる。そんな1/3ではないかな,と思います。