「長期戦」の重要性。

カップ戦だけの実戦環境を,どのようにして変えていくか。


 個人的には,やるかやらないか,という話をしている時期ではない,と思っています。どうやるか,という時期ではないか,と。ホスト・カントリーとして迎える2019,のみならず,その先にあってティア1に食い込んでいこうと思うのであれば,(あえてアソシエーションの表現を使いますが)2種年代,そしてU−23年代の実戦環境整備は大きな課題ではないかな,と思うのです。


 エリート・プログラムを動かすのも,大事なことだと思っています。いますが,同時にサブルートの整備も意識しておいてほしい,とも感じています。頭角を現す時期は,ひとそれぞれに違うはずです。であるならば,エリート・プログラムからは外れた選手でも,再びトップレベル,ジャパンのエンブレムを胸にするだけの選手になれる,そんな環境を整備することもまた,すごく重要だと思うのです。そして,サブルートの充実は長期戦の整備と大きく重なっているように,個人的には思うのです。


 今回は,ひさびさに楕円球方面の話を加藤さんのコラム(スポーツナビ)をもとに書いていこう,と思います。


 加藤さんもコラムで触れておられますが,今季から関東の大学は新たなトーナメントを戦うことになります。対抗戦の上位チームとリーグ戦の上位チーム,対抗戦の下位チームとリーグ戦の下位チームでそれぞれグループを作り,1回戦総当たりのリーグ戦を戦う,春季大会であります(交流戦,という形でここでも何度か取り上げております)。


 もちろん,歓迎すべき話であるのは当然です。しかしながら,「はじめの一歩として」という留保文言を付けておきたい話でもあるわけです。


 このことは,大学年代に限定される話ではなく,高校年代にあっても当てはまる話だろう,と思っています。たとえば高校年代の実戦環境を考えてみると,大学年代以上にトーナメント(カップ戦)が大きな意味を持っています。また,トーナメントを勝ち上がることがない限り,試合数は確保されません。自分たちのラグビー,その持っている強みをどう戦術的に生かし,逆に弱点をどのようにして抑え込んでいくのか,というチーム・ハンドリングがなかなか機能させるのが難しい環境,と言っていいかも知れません。ここでは機会あるごとに書いていることでもあるのですが,実戦を通じて見えてきた課題,その課題をトレーニングを通じて潰すと同時にチーム戦術の熟成へとつなげ,そして次の実戦を戦う,いう循環が機能しはじめなくては,実戦環境がしっかりと整備されたことにはならないのではないか,と感じるのです。カップ戦を駆け抜けるためのチカラも大事ですが,ゲーム・インテリジェンスを強化していくためには,という視点で考えると,カップ戦だけの実戦環境でいいのだろうか,と思うところがあるのです。


 当然,リーグ戦を動かすとなると,さまざまな問題が出てきます。


 グラウンドをどのようにして確保するか,にはじまり,リーグ戦を動かし続けるためのフィナンシャルな部分での課題も見えてくるはずです。当然,参加するチームにもカップ戦とは違った問題が出てくるでしょう。学校によっては,長期にわたるリーグ戦を戦うだけの負担が厳しい(たとえば,チームを移動させるための手段を持っていないとすると,試合ごとに貸切バスをお願いすることになり,そのコストが大きな負担になる可能性がある),というケースが出てくるかも知れません。それでもJFAは,2種チームの軸足をリーグ戦へと動かすことを選びました。2種年代の重要性を意識しているからこそ,さまざまな問題が発生するだろうことを意識しつつも「動きながら考える」ことを選んだのでしょう。


 もちろん,JFAのやり方だけが正解,ということはありません。けれど,JRFUも同じく2種年代の重要性を意識しているのであれば,何らかのアクションを起こすべきかな,と個人的には感じています。JFAの高校年代へのアプローチを研究するなかから,ラグビー的なリーグ戦の方向性を見出していく,そんなやり方もあるのではないかな,と思うのです。


 2019,このときに主力を担うのは恐らく,「現段階において」中学年代であったり高校年代の選手たちであるはずです。彼らの競技環境はそのまま,2019へとつながっているはずですし,その先にもつながっているはずです。と考えるならば,2019へのリードタイムは決して多くないし,JFAのように,「動きながら考える」ことが強く求められているのではないかな,と思います。