対磐田戦(12−10A)。

ボールを隠す。


 相手が掛けてくるプレッシャーに対して,ボール・コントロールを失わない。そのために,特にセントラル・ミッドフィールドで強く求められる要素だと言われますが,今季のフットボールを見ると,この要素が求められる範囲,ちょっと広く考えておくべきかな,と感じます。


 まいど(以下省略),のアウェイ・マッチな磐田戦であります。ありますが,今回は磐田戦だけでなく,ちょっと広めに感じるところなどを書いてみよう,と思います。


 その前に,結果についてどう見るか,を短く書いておけば。一時的にせよ,「勝ち点3」に近付いているのだから,「勝ち点2」を失ったという見方もできるかな,とは思います。けれど,試合全体を眺めれば,「勝ち点3」がフェアな試合だったとは言いにくいのも確かです。タイトな日程にあって,決してコンディションがいいとは感じられなかった前節からの反発力が時間帯限定であるとしても見えたこと,を含めて「勝ち点1」を持ち帰ったことをポジティブに意識すべきかな,と思います。


 さて,話を戻してボールを隠す,という部分を気にしている理由を書きますと。


 リズムの幅が,ちょっと狭いような気がするのです。ごく大ざっぱに言ってしまうと,中盤でのリズムがまだアップテンポなものだけに絞られているから,守備ブロックをしっかりと組まれてしまうと,なかなか相手の守備応対リズムを崩しに行けないように感じるのです。もともとアップテンポだから,そう簡単にリズムをギアチェンジすることはできません。さらに,コンディションが常に高みで安定している,とも限りません。大宮公園でのアウェイ・マッチであったり前節の戦い方はどちらかと言うと,この感じでしょうか。今節はブロックを崩さないというアイディアだけでなく,鋭くボールにアプローチしていくことを組み合わせながら浦和のリズムを潰しにきていたように感じるのです。確かに,フットボールを意識したアプローチです。


 自分たちのリズムで試合を動かせないときに,どうリズムを引き戻すのか。


 たとえば100%フィットな状態であれば,アップテンポな攻撃も効果的に機能していますし,リズムの幅を強く意識する必要性は必ずしもないかな,と感じるところもありますが,長いシーズンを戦うとすれば,アップテンポな攻撃だけに依存するわけにはいかないようにも思うのです。相手のプレッシャーを回避して,「時間をつくる」ことが求められてくるのではないかな,と。パスを受ける,ボールを引き出す側のオフ・ザ・ボールの動き,その動きを引き出す時間を作り出すために,パスを繰り出す前段階としてボールを隠すシークエンス,もっと大ざっぱな言い方をしてしまえば,チームとしての「タメ」が求められていくのかな,と感じるところがあるわけです。


 で,今季のフットボールを当てはめてみると,です。


 当然ながらセントラル(阿部選手と啓太選手)にはボールを隠して,時間をつくることが求められます。それだけでなく,ビルドアップのごく基礎段階,と考えるならば,最終ラインの3(槙野選手に永田選手,そして坪井選手)もボールを隠して時間をつくっていかないといけないように感じます。オフ・ザ・ボールでの駆け引きが片翼であるとすれば,守備ブロックの安定性,守備応対面での安定性も当然ですが(今節は,こちらが大きな問題でしたが。),ビルドアップ初期段階での安定性,リズムをちょっと動かすためのワン・アクションが求められているように思うのです。


 かつて,10番を背負っていたフットボーラーが担っていた「タメ」を,チームとして表現していくことができていくと,夏場のフットボールに決して小さくないヒントになるような,そんな印象を持ちます。