戦術交代。

自分たちが主導権を握っていれば,表面化しない話です。


 主導権を握られている,後手に回っているからこそ,問題になる話であります。


 リズムを引き戻す,自分たちが主導権を握り返すために仕掛けていく,という方向から戦術交代を見ると,今節は残念ながら,戦術交代が機能しきれなかった試合,ということになるかな,と思います。ちょっとばかり,戦術交代にだけフォーカスしてみよう,と思います。


 ちょっと,マッチデイまでの流れを振り返ってみるに。


 平川選手と柏木選手が別メニュー調整をしている,という話がメディア経由で入ってきていました。正確なところをメディアの話だけで理解するのは難しいものがありますが,少なくとも100%フィットという状態ではないことは理解できます。そんな状態であっても,ミシャさんは彼らをスターターとしてクレジットしてきた,という部分に,今季のチームで誰が鍵を持っているのか,という部分が見えるようにも思うのですが,反面で完全なフリーハンドで戦術交代を仕掛けられない,というハンディを背負ってしまったようにも映ります。


 また,今節の立ち上がり,阿部選手が不安定な状態であったように映りました。実際には,90分プラスをフルにピッチで,という形でしたが,かなり早い段階で交代枠を使わざるを得ない,そんな状態もどこかで意識したのは確かです。最初の交代枠が使われるのは,ハーフタイム終了時です。柏木選手に代えて,原口選手をピッチへと送り出します。前半段階の状態を見る限り,柏木選手のコンディションは100%とは言えなかった。それだけに,決して不自然な話ではないのですが,チームの機能性,という側面から考えると,「使い使われる」という関係性がスムーズではない,そんな状態が必ずしも好転したとは言えないように思うのです。相手の厳しいプレッシャーを回避しながら,同時に自分たちのフットボールへと引き込んでいくためのインテリジェンスの速度,であったり連動性が,大きく変化したようには受け取れなかった。要は,柏木選手の持っている個性とは違う,原口選手を生かし,同時に原口選手が生かされる形での連動性が見えてくると違った局面が描けるかな,と思ったのですが,そういう形にはなかなか持ち込めなかった,という印象を持つわけです。


 続いて,啓太選手に代えて小島選手を送り出し,最後のカードは坪井選手と変わる形でランコ選手,でした。ここで気になったのは,最後の交代枠の使い方,です。


 パッケージを動かすことになる交代である,という部分も当然に気になるのですが,相手の出方にかかわらず,すべての交代枠を使い切った,という部分が気になるのです。スタッツを見直してみると,浦和がすべての交代枠を使い切ったのは71分のことですが,この段階で相手は交代枠を1つも使っていません。彼らのダッグアウトを考えてみれば,浦和が攻撃的に仕掛けてくることは,自分たちがカウンター・アタックを仕掛けていくにあたって,ある意味で望むところ,な展開だったはずです。実際,直後の72分にはマルキーニョスを送り込み,79分には谷口を送り出しています(こちらに関しては,リスク・マネージメントの側面も感じますが)。


 「勝ち点3」という結論から逆算してどう仕掛けるか,ということであるとしても,相手の仕掛け方に対応するための余地を失ったのは,結果として大きな要素になったかな,と思うのです。特に今節は,後手に回ったまま多くの時間帯を使うことになってしまってもいます。その後手を早い段階で,と思うのは当然として,相手の狙うゲーム・プランにより深く嵌り込んでいくことになってはいなかったか,と思うのです。攻撃方向にウェイトを掛けていく,というメッセージにブレを感じることはなかったのは確かですが,反面で相手に握られているリズムを引き戻す,という意味では課題を残したようにも感じます。