対横浜FM戦(12−09)。

初手の打ち間違えが,試合全体に影響を与えた。


 第7節の対戦相手,彼らのゲーム・プランと相似形を描くようなイメージを持っていただろう相手に,先制点という大きな武器を与えてしまったことが,後手を踏まされる大きな要因になったように感じるわけです。


 ひさびさにいつも通りのタイミングであります。と言いますか,今季のパターンですとマッチ・プレビューを書いているのかレビューを書いているのか,意味不明な状態になってしまう,連戦であります。それだけにリズミカルに,と思う試合でありましたが,な横浜FM戦であります。


 では,相手のゲーム・プランを読み解くことからはじめますと。


 あくまでも数字の話,ですが,4−4−2,中でも最終ラインと中盤で構成される「ある部分」にゲーム・プランの重要な部分が表現されているように思うのです。立ち上がり段階から,自分たちが主導権を掌握する形で攻撃を動かす,自分たちの強みを押し出して,というのではなく,浦和が持っている強みを消し去るという部分に意識をより強く傾けていたように思うのです。慎重に試合に入っていこう,と。そして,5ではなく4の形を維持しながら守備的な安定性を,というアプローチを持ち込んできた。第7節の相手はミラーに持ち込んで強みを消す,というやり方だったけれど,今節は違うアイディアで浦和の個性を消し去りにきた。


 では,浦和はどうだったか,とみると。


 相手がボールを収めようとするフットボーラーに対してアプローチを素早く仕掛けてきた,という部分もあるにしても,チャレンジ・パスがいささか多く積み上がってしまったように感じます。特に今節にあっては,柏木選手のコンディションが攻撃面での大きなネガティブとして作用してしまったように映ります。ごく大ざっぱに言ってしまえば,パスを繰り出すタイミングをなかなか自分のリズムに引き込めていないように感じられました。恐らく,ボールを引き出した時点で,いいボールの受け方をできていない,相手を背負うような形でボールを受ける形になっていたからだろう,と思いますが,持っているはずの視界が狭くなってしまっているように見えたわけです。結果として,厳しいスペース,相手のマークを剥がしきれていないタイミングでのパス,かなり厳しいチャレンジ・パスを繰り出す形になってしまって,相手にカウンター・アタックの起点を提供するような形になってしまったな,と思うのです。


 では,柏木選手だけのコンディションが問題か,柏木選手が抑え込まれてしまったことだけが,リズムをつかめなかった大きな要因か,と言えば,そんなことはないだろう,とも感じます。


 チャレンジ・パスになってしまっている,という部分をなかなかチームとしてカバーしきれなかった,という部分が課題ではないか,と見ています。立ち上がりの時間帯を見る限り,早い段階から相手の出方に「焦れて」しまった,という感じはしません。しないのだけれど,相手の戦い方に対応する,「幅」を感じにくかった,というのも確かです。


 たとえば。


 ボールを受けてからの機動性ではなくて,ボールを受ける前段階として相手のマークを剥がしに行く,という方向での機動性が今節はより強く求められたかな,と思うのですが,なかなか前半にあってはその機動性が表現されているとは感じられませんでした。そのために,緩やかなビルドアップから攻撃リズムを強めよう,というタイミングを相手につかまえられる局面が積み上がってしまった。ボールを引き込むために,ポジションを奪う。そのための機動性をどう,チームとして表現していくか,が引いて構えてくる相手に対しての大きな課題であるように感じます。


 そして,膠着するかも知れない試合にあって,やらなくてはならないことを相手に表現された,という部分も大きな課題かな,と思います。セットピースからの得点奪取,です。セットピースから先制点を奪われ,相手が描くゲーム・プランの中で試合を戦わざるを得なくなった。物理的にも後手を踏んでいるわけですが,それ以上に心理的な部分で後手を踏んでいる。やりたいことを抑え込まれているのみならず,自分たちがやらなくてはいけないことをやられた,という部分は,決して小さくないダメージだったように思います。後半,戦術交代によって攻撃面へとチーム・バランスを傾け,スコアをイーブンへと引き戻すことはできたけれど,後手を精算しきったわけではない。むしろ,「勝ち点3」への意識,縦への意識を相手が仕掛けてきた戦術交代が利用していたようにも感じます。


 さてさて。「勝ち点1」を確保する,というのではなくて,「勝ち点3」を狙いに行ったがために「勝ち点0」となった試合である,と見ることは当然にできるでしょう。


 でも,結果ベース「だけ」で捉える試合ではないな,とも思っています。今季型のフットボールをさらに進化させるための,決して小さくないヒントがあった,とあえて強気に考えておくべきだろうと思います。引いて構える,と考えると,パッケージが真正面からぶつかることになる,3であったり5を意識します。しかし,今節は5に受け取れる時間帯はそれほど多くはありませんでした。むしろ,センターバックと中盤で構成されるブロック,その安定性をどこまで維持するか,を強く意識付けてきたように見える。このブロックを崩すために何が必要か,ということです。アウトサイドへとボールを振り出すタイミング,そのタイミングをどれだけ柔軟に動かせるか,であったり,ボールサイドをどのエリアでつくるか,という部分であったり。今季のフットボール,そのコンセプトの根幹は,相手を引っ張り出すことにあって,崩れたバランスを突くことにあるはずです。同じ崩し方,がコンセプトではない。であるならば,崩し方にもっと幅が見えてこないといけない。


 今節のような試合であっても,自分たちのリズムへと相手を引き込んでいけるような,そんな戦い方の幅を身に付けることが,これからの厳しいコンディションを乗り切っていくためにも求められるように感じます。