シーマ復活(のことなど)。

日産のブランド・ハンドリングを(良くも悪くも)象徴する車種。


 モータースポーツ方面ですと,比較的好意的に見ているメーカですが,このクルマに関してはちょっと厳しめ,かも知れません。


 今回はフットボール方面を離れまして,こちらの記事をもとに,日産の新たな旗艦車種,シーマについて書いていこう,と思います。


 今回,再び設定されることになったシーマは,ごく大ざっぱに言ってしまえば“フーガ・ハイブリッド(LWBモデル)”とでも表現すべきモデルです。かつてのようにV型8気筒エンジンを搭載しているのではなくて,V型6気筒エンジンにハイブリッド・システムを組み合わせた,ちょっとだけ(とはいいながら,搭載されているエンジンは3500ccの排気量を持っていますから,ホントにちょっと,ですけども。)ダウンサイジング,な大型車であります。


 さて,いつものようにデザイン面を考えますと。


 やっとこの段階で,ブランドとしての記号性が見えてきたかな,と思います。もちろん,国内市場を基準とする話ではなくて,北米市場を基準とする,“インフィニティ”の存在を念頭に置いた話であり,デザインの方向性から言えば中国市場を基準とする話です。面構成だけをデザイン言語とするのではなくて,面構成に曲線を加えた形でデザインをつくっています。最も分かりやすいのがサイド・セクションかな,と思いますが,決してシーマ,そしてフーガの面構成が弱いわけではありません。けれど,面構成に付け加えられた,曲線の主張がかなり強くなっています。これは,スカイラインも例外ではないし,もっとスカイライン・クーペですと変化が明確に看取できるように思います。ある意味で古典回帰なデザイン手法(建築におけるポスト・モダンが古典の再解釈,という側面を持っているのと相似形かも,ですね。),と言えるかも知れません。好きか嫌いか,を別とすれば(と書くときは,大概苦手なもの,ということになるわけですけど。),日産,特にインフィニティ・ブランドに投入されるクルマのテイストはほぼ相似形を描けるようになっているわけです。


 この記号性が,長くシーマには欠けていたように思うのです。


 大型車に新たな市場性があることを見抜いた,という意味では確かに評価できるクルマなのですが,それでは,その新たな市場をリードし続けることができたか,インフィニティ,という新たな高級車ディビジョンを展開するにあたって,そのイメージを象徴するようなクルマにまで引き上げることができていただろうか,など,疑問符が多く付くのもまた,確かであるように思うのです。


 英国車的な雰囲気を持っていたようであり,でも意識していたメーカは同じようでいて,実際にはかなり違ってしまっているようであり。さらには,インフィニティQ45との相似性,あるいは共通性がどこにもない,という状態をつくってしまってもいた。ディビジョンとしての個性をデザインへと落とし込んでいく,というのは難しいものがあるのだろう,とは思いますが,それにしても,共通する記号があまりにも少なく,その状態を継続してしまっていた。シーマとしての確固たる記号が,そのままインフィニティに引き継がれるのではなかった,というのが,レクサスとの距離を生んでしまった,そのひとつの要因でもあるように思うのです。