対川崎戦(12−04)。

「勝ち点1」を守りきったのは,確かに大きいことですが。


 なぜ,「勝ち点1」を守りきらなくてはいけない状態に陥ってしまったのでしょうか。後半立ち上がり直後の時間帯から,後手を踏む時間帯が積み重なっていったようにも感じますが,何が後手を踏ませる要素だったのでしょうか。


 この試合からは,浦和がクリアしていかなくてはいけない課題が複数見えるように思うのです。競技場とピッチとが一体感を持って「勝ち点1」を守りきれた,という要素とは別に,冷静に考えていかなくてはいけない,そんな試合であったように思います。


 いつも通りの1日遅れ,ではなくて2日遅れの川崎戦であります。


 厳しく見れば,前半の段階である程度,試合を決めておかなくてはいけなかった,そんな試合であるように感じます。追加点を奪っておきたい局面で,結果として追加点を奪えなかったことが,この試合を必要以上に難しくしてしまった要因かな,と思いますし,追加点を奪えなかったにもかかわらず,不思議とチームがスローダウンしてしまったかのような印象を与えたことが,相手に主導権を譲り渡す大きな要因になっていたように感じます。


 端的に書いてしまえば,後半開始直後からの時間帯になりますが,自分たちで主導権を握ってゲームを動かす,という姿勢がちょっとルーズになってはいなかったかな,と思います。相手の描くフットボールに対して,明確に後手を踏んだまま厳しい状態へと追い詰められてしまった,と。


 ちょっと,相手の視点で考えると。


 前半はなかなか,トップにボールがいい状態で収まらなかった,という印象でしょうし,チーム・バランスで見ると片翼がほぼ抑え込まれた状態に陥っていたように感じます。浦和を抑え込み,主導権を奪うには浦和のアウトサイドを低いエリアに抑え込んでおくこと。そして,縦に鋭い攻撃を仕掛けていくことで,浦和の守備応対を追い掛ける形に追い込む。そんな戦術意図が,後半開始段階での戦術交代にはあったのではないか,と思います。そんな相手の戦術意図に対して,見事なまでに後手を踏んでしまったように感じます。追加点を奪うための守備応対を仕掛ける,攻撃面で主導権を取り戻すための守備応対,という姿勢よりも,先制点を守りきる,という意識が相対的に強まってしまっていたように感じますし,その守備応対も自分たちが仕掛けた網に対して相手を追い込んでいく,という形にはなっていなかったように感じられます。


 ボールをどのエリアで奪い,攻撃へとトランジットしていくのか,という戦術意図が曖昧なものとなっていたように感じられますし,攻撃を組み立てる,そのイメージも相手のプレッシャーによってなかなか表現できていなかったように感じられます。


 後半立ち上がりの時間帯から,相手が描こうとするフットボール,そのイメージに乗せられたまま,なかなか自分たちの描くべきイメージへと引き戻すことができなくて,攻撃を仕掛けるにしても自分たちのリズムには乗っていなかったように感じられるわけです。となると,攻撃が中途半端な状態で断ち切られる局面が出てきますし,自分たちの形で攻撃できていない,という心理面が作用しているのか,チーム・バランスも決して安定しているわけではありません。その不安定なバランスを突くように,縦を意識した攻撃を相手は繰り出してくるわけですから,どうしても守備応対面が「追い掛ける」形に追い込まれます。


 結果として,2人のフットボーラーをセントオフによって欠くことになるわけです。

 
 今節と,カップ戦を含めた今季のゲームを比較してみるに,チームとしての守備バランスが微妙にズレを生じていたのではないかな,と思います。たとえば,高いエリアからの守備応対であります。ボールを常に奪いに行く,という意味での強い守備応対ではないとしても,やはりボール・ホルダーの選択肢を狭めるためにしっかりとしたプレッシャーを掛け与えてほしいところです。このプレッシャーが,今節はしっかりと掛かっていただろうか,と考えると,なかなか意図する形でプレッシャーが掛かっていた局面は多くないように感じます。もうひとつ,縦方向のポジション循環が決してスムーズではなかったような印象が残っています。低い位置でのパス・ワーク,だけではなくて,積極的にボールを保持した状態でエリアを上げていく姿勢が必要かな,と感じます。高い位置で守備応対を仕掛けてくる相手に対して,パス・コースを切りに行くだけでは足りない,との意識を持たせるためにも,もっとポジション・ブレイクを仕掛ける局面が増えていい,と感じるところです。


 指揮官が狙うフットボール,その基礎段階だけで止まっていては,恐らく相手に対処されることが多くなるはずです。浦和としては新たなチャレンジ,であるとしても,相手にとって見れば「経験しているフットボール」でもあるわけです。相手に主導権を掌握されて,なかなかリズムを引き寄せられない(引き戻せない)状態で,基礎だけではなかなかリズムを取り戻すのは難しい。であるならば,基礎段階であっても浦和の戦力でなければ表現できない要素を付け加えていかないといけない,とも言えるはずです。今節は,そんな「浦和としてのフットボール」の部分が,狙うフットボールの熟成にあっても重要な鍵だということを示す,そんな試合だったように感じるところです。